高山郁夫が明かす「ブルペンの世界」 2007年、プロ9年目の水田章雄はなぜ34歳でブレイクしたのか (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

2007年に45試合に登板して5勝、19ホールドをマークした水田章雄 photo by Kyodo News2007年に45試合に登板して5勝、19ホールドをマークした水田章雄 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る

【一軍で活躍できる投手の共通点】

── 外国人選手に限らず、高山さんのコーチングは選手それぞれの立場を理解するところから始まっています。

高山 プロ野球は厳しい世界ですから。数字を残せなければ「もういい」と言われる1年単位の契約社会で、毎年不安でしょうがないわけです。「こんな選手になりたい」と思い描いていたイメージどおりの野球人生を送れる選手はごく一部で、周りと自分を比較して焦り、戦力外通告を受けて去っていく選手を見送って不安にかられる。そんな厳しい世界だからこそ、選手には少しでも成功する可能性を広げるための練習をしてほしいと考えていました。

── プロ野球選手も人間ですから、いつも不安と隣り合わせで戦っているのですね。

高山 ただでさえストレスがかかるなかで、ブルペンでよけいにプレッシャーをかけても仕方がないわけです。とくに一軍のリリーフ陣は競争に勝って、チームの代表としてブルペンにいるのですから。こちらが「使える」と思って起用しているので、できる限り気持ちよく投げてもらいたいんです。

── 高山さんがソフトバンクの一軍ブルペン担当になった2007年は、水田章雄投手が中継ぎでブレイクしています。当時プロ9年目、34歳と遅咲きの右腕でした。

高山 水田は、気持ちのやさしい選手でした。能力はあってもなかなか結果が残せず、一軍に定着できずにいたんです。当時の水田はストレート、フォーク、カットぎみのスライダーが配球の軸。当時のプロはカット・スライダー系のボールが変化球の主流になっていて、カーブを投げる投手が少なくなっていました。そこで水田に「カーブを投げられないか?」と聞いてみたら、ヒジを柔らかく使って縦割れのいいカーブを投げたんです。このカーブを使ったほうがいいと話しました。

── ほかの投手にはない特徴を見つけたわけですね。

高山 あとは「インコースのストレートを使おう」という話もしました。一軍で活躍できる投手の共通点は、インコースを突けること。たとえ球威が乏しくても、インコースを攻めることができるから一流になった例はたくさんあります。私の知る限り、右打者のインコースを突かずに先発ローテーションで活躍した右投手は金子千尋(元オリックスほか)くらいです。

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