高山郁夫が明かす「ブルペンの世界」 2007年、プロ9年目の水田章雄はなぜ34歳でブレイクしたのか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── それは相当なカルチャーショックでしたね。

高山 アメリカのコーチからすれば、「日本人は投げすぎ、走りすぎ」という感覚なんです。コーチをするうえで、アメリカ留学の経験は本当に大きかったですね。日本にやってくる外国人投手のことも理解できるようになりましたから。

── 高山さんはブランドン・ディクソン(元オリックス)など、外国人投手から慕われていたイメージが強いです。

高山 日本人の感覚からすると、「外国人はなんでこんなに投げないの? 練習しないの?」と感じてしまうはずです。でも、彼らは文化も考え方も、まるで違うものを教わってきているわけです。日本野球に順応してもらうのは当然ですが、彼らの根本的な部分を理解してやらなければいけません。だから私は「アメリカの野球からすると、日本の野球はびっくりするだろ?」と寄り添うところからスタートしていました。ただでさえ異国の地で孤独感を覚えるなか、プライドを持った人間が新しい文化になじんでいくのは大変です。私は自分のアメリカ留学体験から、彼らの不安を理解しているつもりでした。

── 外国人選手からすると、自分の戸惑いを理解してもらえるだけで安心できるでしょうね。

高山 一方通行のコミュニケーションにならないように気をつけていました。実際に「キミの考え方を尊重しているよ」というスタンスで接していると、向こうから悩みを打ち明けてくれるようになるんです。

── どのような悩みが多かったのでしょうか?

高山 スライドステップ(クイックモーション)やサインプレーの多さですね。MLBはランナーが二塁に進もうが、「ホームに還さなければいい」という考え方。また、打者と力と力の勝負をする文化ですから、バントを多用したり相手を揺さぶろうとしたりする日本野球とは質が違いました。もちろん、最終的には「ベースボールと野球は違う」と理解してもらわないと、日本では活躍できません。プライドが許さず、「こんなのベースボールじゃない」と自分を変えられない選手は、残念ながらすぐに帰国していた印象です。でも、それも人それぞれの価値観ですから仕方がありません。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る