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阪神・佐藤輝明はどうしたら蘇るのか? 名コーチ・伊勢孝夫が解説するサトテルの「トリセツ」 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 本人がそれを求めて頑張るのはいい。しかし、マスコミを含め周囲が過大な期待を押しつけるのは、阪神というチームの問題点である。私に言わせれば、あの欠陥の多いスイングで24本塁打を打てたこと自体すごいことである。

 彼はプライドが高いというか、完璧を求めてしまうのだろう。ホームランも打ちたいし、打率も残したい。その気持ちはわからないでもないが、今の彼の状態を考えるとどちらも中途半端になってしまう可能性が高い。個人的には「ホームランをとって、打率を捨てる」というくらいの割り切りが必要だと思っている。

 一部報道では、岡田監督と反りが合わなくなっているといった話も囁かれているが、結果云々というよりは、基本に反するプレー(凡プレー)をするから厳しく接しているのだと思う。

 ただ彼は、叱ったからといって「なにくそ!」と思って動くタイプではないようだ。もし私がコーチだったらどうするか? ほめて伸ばすしかない。ほめ殺しだね(笑)。彼のようなタイプはほめまくって、やる気を引き出す。もちろん、それだけだと選手もなめてくるから、「ここ」というポイントは絶対に譲歩してはいけない。技術的なポイント、修正しなければいけないポイントだけは「絶対にやろう!」と釘を刺す。

 たとえば、ティーバッティングでもロングティーでもいいが、下半身がヘトヘトになるくらいバットを振らせて、それでも改善が見えてこないとする。それでも絶対に終わってはいけない。妥協せずに続けることだ。コーチは「オレも一緒にやっている」という気持ちでボールを上げてあげること。そうすれば気持ちが通じるし、お互い意見を交換できるようになるだろう。

 あとは本人がどこまで危機感を持ってプレーできるかだ。今年で大卒3年目、プロとして自立しなければならない時期に入っている。そのためにも、まずは原点回帰。1年目の、あの豪快さを取り戻してほしい。


伊勢孝夫(いせ・たかお)/1944年12月18日、兵庫県出身。62年に近鉄に入団し、77年にヤクルトに移籍。現役時代は勝負強い打者として活躍。80年に現役を引退し、その後はおもに打撃コーチとしてヤクルト、広島、巨人、近鉄などで活躍。ヤクルトコーチ時代は、野村克也監督のもと3度のリーグ優勝、2度の日本一を経験した。16年からは野球評論家、大阪観光大野球部のアドバイザーとして活躍している

著者プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

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