阪神・佐藤輝明はどうしたら蘇るのか? 名コーチ・伊勢孝夫が解説するサトテルの「トリセツ」 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 それで結果が出ないとなると、さらに難しいボールを打ちにいこうとして、フォームを崩す。もちろん、彼もいろいろ考えて打席に入っているのはわかる。タイミングの取り方を変えてみたり、バットの出し方、スタンスの幅を変えてみたり......試行錯誤しているのはわかるが、それがバッティングをより難しくしているように思えてならない。

 ただ今季に限っては、技術的な問題もさることながら、気持ち的に乗っていないように映る。集中力を欠き、「ボール球を捨てろ」と言ったところで聞かないだろう。

 ファームでの試合も見ているが、相変わらず精彩さを欠いている。二軍調整を命じられた際、「ボール球に手を出すな」という指摘があったと聞くが、改善されているとは思えない。

 そもそも二軍行きは、打撃よりも守備で拙いプレーを立て続けにやってしまったことへの懲罰的な措置だったわけだが、ファームの試合でもミスをやらかしていた。あれで最短10日での一軍昇格が消えてしまった。

 では、どうしたらサトテルは蘇るのか。

 答えは単純明快。原点に戻ることだ。具体的に言えば、全部の球をヒット、ホームランにしようと思わないことだ。ひたすら来た球を打つ。それだけに集中することだ。おそらく、新人の時はそうだったはずだ。

 以前、彼の出身である近畿大の関係者と話したことがあるが、サトテルは大学時代からインハイは打てなかったという。大学でできなかったことを、プロでそう簡単にできるはずがない。

 弱点を克服しようとする意識は大事だが、それに固執して、打てていたはずの球までとらえられなくなってしまっては本末転倒である。では、インハイはどうすればいいのかだが、結論から言えば"捨てる"しかない。とにかく打てる球だけをひたすら待つ。それだけでも変わるきっかけにはなるはずだ。

【ほめて伸ばすしかない】

 サトテルには、もうひとつ気になることがある。1年目にそれなりの結果を出してしまったことで、周囲がその気になってしまったことだ。24本も打てば、30本、40本を期待する。打率だって、2割3分が2割6分になれば、じゃあ次は3割だ、と。

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