DeNA小園健太が振り返るほろ苦一軍デビュー 「登板前日は眠れなかった」親友からは辛口エール (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 ベンチに下がったあとは、心にしこりを残しながらも、追い上げを試みるチームに声援を送った。そんな時、横に来て話しかけてくれたのがベテラン捕手の伊藤光だった。

「光さんに『緊張したか?』と訊かれたので、『すごくしました』と。すると光さんは、自分の初スタメンの話をしてくれたんです。『足が震えるほど緊張したけど、ここでやらなきゃいけないって自分を奮い立たせたんだよ』って。自分もそういう経験が3年目にして初めてできて、三振やアウトを取ったりするとファンのみなさんにすごい歓声や拍手をいただいて、それがすごく力になったんです。だからこそ、もう一度投げたいという気持ちが強くなりました。弱い気持ちで投げていたらチャンスはつかめないし、もっと強い気持ちで投げなければとあらためて感じています」

【親友からの辛口エール】

 また、現在トミー・ジョン手術を経てリハビリ中のライバルであり、チームメイトで親友の深沢鳳介がハマスタを訪れ、観客席から小園のピッチングを見つめていた。

「鳳介からは『先頭から三振をとった時はいくなと思ったんだけどなあ』と言われました。だけど、あとはもうディスられまくりです」

 そう言うと小園は苦笑した。盟友だからこそ歯に衣着せぬ言葉がありがたかった。

「きついことを言ってくれるほうがいいですよ。もっと頑張らなきゃなって」

 一軍というステージに上がったことで、自分ひとりのためではなく、チームのためはもちろん、家族のため友人のため、そして応援してくれるファンのために腕を振る意識と覚悟は以前よりも強くなった。この苦い経験を次に生かすことができるのか。真価を問われるのはこれからだ。

 現在はファームでローテーションをまわり、次なるチャンスをうかがっている。与四球も少なく攻めのピッチングで順調にイニングを消化し、また一軍で戦うために引き出しを増やすことをイメージして、チェンジアップや横滑りする改良を施したスライダーといった新球も試している。以前とは違う自分になって、再びハマスタのマウンドを目指す。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る