DeNA小園健太が振り返るほろ苦一軍デビュー 「登板前日は眠れなかった」親友からは辛口エール (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi

 刻一刻と迫る試合開始時間、ブルペンに入りいざピッチングをしてみると、あまりいい感触を得られなかったという。

「自分のなかでは全然よくなくて、やっぱり緊張しているのかなって。けど、試合がいざ始まると、初球の入りがめちゃくちゃよかったんです」

【最高の滑り出しだったが...】

 先頭打者である三好大倫への初球は146キロの外角へのストレート。これをファウルにされ、つづく133キロのスプリットもファウルとなり、2球で相手を追い込んだ。最後はカーブで見逃しの三振を奪い、これ以上ないスタートだった。

「人生で初めてといっていいぐらい、打者とキャッチャーしか見えていないぐらい集中していました。僕は気が散ってしまうと調子が狂ってしまうことはわかっていたので、とにかく集中しようと」

 つづく田中幹也は、フルカウントから四球で出塁させてしまう。粘り負けしてしまったが、厳しいところを攻めたうえでの四球なので、あまり気にはしていなかった。だが、次の高橋周平との対戦で状況は一変してしまう。

 1ボール2ストライクと追い込んだ5球目、インサイドのストレートでセカンドゴロに打ちとってダブルプレーと思いきや、ファーストのタイラー・オースティンの足が塁から離れていた。一塁塁審はアウトをコールしたが、当然中日はリクエストを要求した。

 あの時の状況を小園は振り返る。

「僕はファーストにカバーに入っていたのでTA(オースティン)さんの足がベースから離れていたのが見えていたんです。だから2アウト一塁だなと思ってマウンドに戻ったら、相手からリクエストが出ている。僕は一塁塁審がアウトを出していたのが見えていなくて、もしかしたら二塁のベースを踏み損ねてオールセーフになったのかといろいろと考えてしまったんです」

 何が起こっているのかわからない状況。ここで小園の集中力が切れてしまった。

「それまでバッターしか見えていなかったんですが、リクエストの間に周りを見まわしてしまって......人の多さだったり、歓声の大きさだったりを感じてしまって、これはやばいなって」

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