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T−岡田の複雑な胸中「やっぱりおもんないっすよ」 昨年0本塁打の元キングが今季にかける思い (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 そう話す岡田の表情は明るかった。昨年は早々に背中を痛め、オープン戦の出場は1試合、4打席のみ。一昨年も3試合でわずか5打席。近年はコンディション面でつまずき、シーズンのスタートから出遅れていた。今年はそれがなく、オープン戦も最終戦まで出場を続けた。まず戦える態勢にある。

【14年ぶりのノーステップ打法?】

 オープン戦を見ていると、ある試合でネクストサークルの動きに目が止まった。投球に合わせてタイミングを取っていた時だ。右足を地面に接地させたまま重心を沈ませつつ、左サイドへしっかりと体重移動。力を溜め込むように身を縮め、ボールを待つ。一連の動きに重なってきたのは、岡田が33本塁打で本塁打王のタイトルを獲得するなど、キャリアハとなった2010年のノーステップ打法だ。

 この印象を伝えると、「感じは近いです」と頷いた。「ガッツリ感覚を変えている」と言ったのも、このあたりのようだ。

── 意図は?

「去年までの打席の映像を見ていたら、すごく軽く感じたんです。自分では重心を落として、下半身に力を入れているつもりなのにどっしりとした感じがなくて軽い。それでこれではアカン、これはガッツリ取り組まないといけないと思い、(ノーステップのイメージに近い動きも入れながら)先に待つ形をつくっているので、去年とはボールの速さの感じ方も違います」

 実際の打席のなかでは、右足で小さくステップを踏み、ノーステップの時代ほど重心を落としていない。ただネクストでの動きからは、ノーステップ時代の意識が伝わってくる。無駄な動きを減らしミートの精度を上げる──。

 ホームラン王を獲得した2年後、「最終的に目指す形ではない。下半身への負担も大きい」と、ノーステップ打法は封印した。そこへ14年ぶりに戻ったということか。

「戻ったという言い方は使いたくないんです。今までの経験があるなかで、新しい自分になるためにやっているので」

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