ヤクルト・木澤尚文はクローザーを目指し試行錯誤の日々 「人と違ったことをしなければ、この世界では生き残れない」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 そして木澤は「ボールの伸びはなんとなくわかるかもしれませんが、キレって説明できなくないですか」と言い、こう続けた。

「キレを測る数値があるかというとありません。でも、小川(泰弘)さんのボールにさされるとか、石川(雅規)さんはギリギリまで腕が出てこなくて、急にパッとボールが出てくるので、キレがあると感じる。そういった数値で測れないこともたしかにあるので、データや数値だけに頼ってもダメですし、そこがピッチングの面白いところだと思っています(笑)」

 2月のヤクルト沖縄・浦添春季キャンプ。木澤の姿を追えば『プライオボール(※1)』や『フレーチャ(※2)』を使った練習をする姿を見ることができる。
※1=球速アップや体幹・下半身の強化、肩や胸郭の可動域を広げるためのゴム状のボール
※2=体全体を使って投げる感覚をつかむことができるやりの形状をしたトレーニング器具

「今はYouTubeなどで、いろいろなメソッドを知ることができます。ただ、それを使って練習することで球が速くなるかといえば、万人すべてに当てはまるとは言い難い。これをやったから、これを買ったからでなく、続けていたものが突然『こういうことなのかな』という瞬間がある。そういう意味で、僕のなかではまだわからないけど、続けているものもたくさんあります。でもそれは野球が好きなだけで、ピッチングの謎を解明したいとか、そんな大げさなものではないですよ。僕は哲学者じゃないですから(笑)」

 これだけ情報を取り入れると、整理するもの難しくなるのではないか。

「自分の野球人生がどれくらい続くかわかりませんけど、試さずに後悔するよりはやって後悔したい性分なんで(笑)。お金を出して学んだことが自分に合わなかったとしても、そのことに固執することはありません。自分には合わなかったと気づけば、それはそれで収穫です。長い目で見た時のビジョンと、単年で結果を出さなければいけないという両方の立場を考えながらやっていくしかないと思っています」

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