ヤクルト・木澤尚文はクローザーを目指し試行錯誤の日々 「人と違ったことをしなければ、この世界では生き残れない」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 過去に菅野智之(巨人)や千賀滉大(メッツ)も参加したことのある鴻江氏のキャンプでは何を学んだのか。

「シーズンが始まってみないとまだわからないのですが、投げ方のコツを教わりました。自分のなかではよくないと思っている体の使い方も、動き的には理にかなっているからやめなくていいと。たとえば、右足の動きで考えるではなく、左足の動きで考えれば結果的に右足は動くよと。動きのきっかけみたいなヒントをくださり、わかりやすかったですね」

【ラプソードを自費購入】

 こうした木澤の新しいことへの挑戦は、アマチュア時代から続けてきたことだ。慶応大学在籍時には、投球技術を学ぶオンラインサロンにも参加した。

「高校、大学と所属チームのなかで教わるという環境でしたが、将来的に社会人野球なのかプロ野球なのかわかりませんでしたが、野球を続けるとなった時に自分の枠の外の意見も聞いてみたいと。それが始まりといえば始まりです。それこそ1年目は、外部のトレーニング施設をハシゴしました。2年目のオフは、体の強さだけではダメだなと、柔らかさを求めてヨガ的なところで、青木(宣親)さんが通っているトレーニング施設を紹介してもらいました」

 ボールの回転数や回転軸を数値化する計測機器『ラプソード』も購入した。

「チームには優秀なアナリストさんがたくさんいます。彼らと相談しながらデータを使って結果を出せば、データリテラシーとしての重要性が、僕をロールモデルとしてチームに広がればいいな。そういう思いがありましたし、人とちょっと違ったことをしなければ、この世界では生き残れないと感じていたので購入しました」

 聞けば、ラプソードは「慶応大には新しいことに挑戦するという土壌があり、最先端の機器や用具が導入されていて、ありがたい環境でした」と、大学の時から慣れ親しんでいたという。

「ラプソードは自分の感覚と数値をマッチングさせていく物差しみたいなものですよね。野球って、ボールが伸びているとか、キレがあるとか、長いこと主観的な言葉の感覚で取り繕っている世界だったと思うんです。それが数値化されたことで、『この傾斜であればこれくらい曲がる』というのがわかるようになった。当時はまだ球団にラプソードがなく、自分の数値を確認できなかったことも購入した理由のひとつでした」

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