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1年前は青学大のレギュラー争い 一夜にして全国区となった西川史礁が描くシンデレラストーリー (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 5回裏に塩見泰隆(ヤクルト)の代走で途中出場すると、直後の6回表の守りでは、マレク・フルプが放ったセンター後方の大飛球をフェンスにぶつかりながら好捕。この日スタンドを埋めた2万7698人の大観衆から喝采を浴びた。

 このプレーには、西川のことをよく知る大学野球ファンでも度肝を抜かれたに違いない。なにしろ西川は、昨年はレフトとしてプレーし、センターを守るようになったのは今年からという「ビギナー」なのだ。

「外野自体は去年から始めて、センターは今年からなので、まずはひとついいプレーができてよかったです。だいぶセンターにも慣れてきました(笑)」

 フルプの鋭いスイングを見て、「いつもより深く守ろう」とポジショニングを変えた。落下点まで一直線に駆ける足運びは、まるで熟練の外野手のようだった。

 このプレーで勢いに乗った西川は、その裏に前述のタイムリー二塁打を放つ。さらに8回裏に回ってきた2打席目では、左腕のルイス・ルゴの144キロのストレートを引っ張り、三遊間を抜いている。この打席もまた、ファーストストライクだった。

【1年前はレギュラー争い】

 5対0と快勝した試合後、西川はヒーローインタビューでお立ち台に上がり、そのあとには鈴なりの報道陣を前に囲み取材を受けた。

「ファンのみなさまが大声援を出してくださって、いつも以上の力が出せました」

 その極めて丁寧な言葉づかいに、西川の緊張ぶりが伝わってきた。

 最後に西川に聞いてみた。1年前の今ごろを思えば、別世界にいるような感覚なのではないか......と。

 西川はニッコリと笑い、こう答えた。

「そうですね。(大学)1、2年では試合に出られず悔しい思いをしたからこそ、3年生になって『このままじゃダメだな』と感じて、例年以上に練習を積み重ねて、今こういう舞台に立てているので。『やってよかったな』と感じます」

 1年前の今ごろ、西川は青山学院大のレギュラー奪取をかけて猛アピールをしていた。龍谷大平安高時代は通算8本塁打と突き抜けた数字は残せず、本人も「いるかいないかわからないような選手」と振り返るような存在だった。青山学院大でも2年間は鳴かず飛ばずの時期を過ごし、昨春にようやくレギュラーを奪取したばかり。

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