江川卓の投球に「高校生のなかにひとりだけメジャーリーガーがいる」対銚子商戦で1安打20奪三振の快投→甲子園出場を決めた (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

6番・ファースト/岩井美樹/2打数0安打2三振1四球
「高校生のなかにひとりだけメジャーリーガーがいるって感じですよ。当時のプロ野球界の誰よりも速かったんじゃないですか」

7番・レフト/青野達也/3打数1安打2三振
「真っすぐを狙って1、2、3で打ったという感じですね。とにかく江川以上のピッチャーに会ったことがありません」

8番・セカンド/宮内清/2打数0安打2三振
「2打席だったんですけど、配球は同じなんです。ストレート、ストレート、1球外してカーブ。配球がわかっていても打てないんですから。もうすごいというしかありません」

9番・ピッチャー/飯田三夫/2打数0安打2三振
「真っすぐとカーブしかないけど、今まで見たことのないドーンという球がきました。あれだけのボールを投げるヤツって、もう出てこないでしょう」

 この日の江川の投球内容は、打者29人に対し被安打1、四球1、内野ゴロ3、内野フライ2、外野フライ2、三振20。試合は4対0で作新学院が快勝した。江川卓伝説が神話になった試合だった。

【名将も認めた江川卓のすごさ】

 11月5日、関東大会決勝の横浜高校戦。銚子商に勝ってセンバツ出場をほぼ手中にした作新の勢いは、止まるどころかますます加速していく。結果は6対0で作新が勝利して優勝。江川は4安打16奪三振の快投で、楽々完封勝利。もはや16奪三振では誰も驚かなくなっていた。

 この試合、1年生で1番・ショートでスタメン出場した上野貴士はこう述べている。

「江川さんが2年夏に3試合連続ノーヒット・ノーランを達成するなど、新聞紙上を賑わせていたので名前は知っていましたが、開会式直後の試合(対東京農大二高)を見てぶったまげました。真っすぐは速いし、カーブはすごいし、とてもじゃないけど勝てないと思いました。2年の先輩たちも『あんなピッチャーいねぇだろう』と言っていましたね。初回、先頭バッターで江川さんのボールを見た時、『こりゃ無理だ』と思いました。真っすぐを待とうと思ってもカーブが来たら腰が引けるし、最初の1打席で当てるのが精一杯でした。『オレは1年生だよ、少しはナメてくれよ』と思いましたね」

 高校卒業後、ヤクルトに4位指名(入団はせず東芝に入社)されるほど俊足巧打で鳴らした上野でさえお手上げ状態だった。

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