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大谷翔平との投げ合いで始まった斎藤佑樹のプロ4年目 投げられない時にたどり着いた境地 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 1年前はブルペンに入ることもできませんでしたし、そう思えば4年目はいいスタートが切れていたと思います。中垣(征一郎トレーニングコーチ)さんとも、フォームはもちろん、歩き方や走り方まで見直しました。

 うまく使えていない筋肉を動かすためにはどうやって足を着地させればいいのかといった、筋肉や関節のことを学んで、さまざまなトレーニングを取り入れました。満を持して迎えた4年目でしたし、最初の登板となる紅白戦では、とにかく結果を求めなければと感じていました。

【恐怖心に勝たなければならない】

 紅白戦の2月8日は土曜日で、スタンドはいっぱい、最上段には立ち見の人がズラリと並んでいました。先にマウンドに上がったのは翔平です。これまでにも「マー君と投げ合う」などとよく言われましたが、ピッチャーが対戦するのはバッターですから、僕は投げ合うという意識をあまり持ったことがありません。

 それでも翔平の指にかかった時のストレートは高めに伸びれば空振り、低めに投げれば力のないゴロが内野の前に転がります。インコースにいけばバットをへし折る、その威力はイヤでも感じさせられました。だからこそ、僕は僕のピッチングをするだけだと自分に言い聞かせていました。

 そのためにはまず、自分のなかの恐怖心に勝たなければなりません。それから、自分のなかの盛り上がる気持ちにも勝たなければならない......年末からブルペンに入って、あれだけ準備してきたのに、いざキャンプに入って、紅白戦で先発して、たくさんの人に見られて気持ちが高ぶると、どうしても力んで、フォームがブレちゃうんです。

 力感なく、周りで見ている人が「あれっ、ずいぶん軽く投げているのに、なんだかやけにボールは来てない?」と不思議に思うような、そういうフォームで投げることがテーマでしたから、力を抜くところは抜いて、入れるところは入れる。静かに弓を引いて、ギューっと引っ張って、踏ん張るところは踏ん張って、力を溜める。そして矢を離す瞬間、一気に身体を解放してあげる......そんなイメージを目指していました。ダイナミックに見えるけど、決してエイヤっと投げるイメージではありません。

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