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新人王のオリックス・山下舜平大が「あ、これだな」と思った瞬間 最速155キロにアップ (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【ショートアーム変更後に自己最速更新】

── ストレートに関しては、マウンドの傾斜を生かして角度をつけて投げるイメージがあります。

山下 角度はあまり意識していないですね。伸びるような真っすぐをイメージしていますけど、映像で見ると角度が結構ついていますよね。

── 右腕が高いアングルから出てきますが、それは無意識?

山下 そうですね。真上から叩くイメージもないです。

── 投げる感覚は小さい頃からあまり大きくは変わっていないですか?

山下 いえ、2022年に変えました。

── 右腕のテイクバックがコンパクトになりましたよね?

山下 中学生の頃から、投げていて「合わないな」という感覚があって。「右腕を(リリースに)間に合わせよう」と思って、体全体がズレている感じでした。右腕に何も意識が向かなくなれば、下半身とか別のところにフォーカスできると思ったので、シンプルにというか、コンパクトにしました。

── 「合わない」というのは、リリースの瞬間のタイミングがズレるという意味でしょうか?

山下 そうですね。リリースのタイミングであったり、フォーム全体のバランスが合わなかったり。

── それを中学生の段階で感じていたんですか?

山下 みんなそうだと思っていたんですけど......。でも、自分の場合は合わないと全然投げられなかったんですよ。それは直さないと無理だと思って、今の形に至りました。

── いわゆる「ショートアーム」と呼ばれるテイクバックにして、すぐにバチッとはまったのですか?

山下 ゴロ捕球のメニューをよくやっていて、内野手みたいに右腕をコンパクトにして投げていると、いつも「ボールがいくな」「投げやすいな」という感覚がありました。2年目(2022年)に、育成コーチの平井(正史)さんに「そのほうがいいんじゃないか?」と言われて。腰を痛めて投げられなかった時期に、ずっと平井さんとマンツーマンで基礎練習をしていたんです。そこでテイクバックを変えて復帰したら、いきなり自己最速(155キロ)が出て。「あ、これだな」と思いました。

── テイクバックを変えても、カーブは違和感なく投げられたのですか?

山下 カーブに限らず、結局ズレたら投げられないので。ショートアームにしたことで全部まとめて改善された感じでした。回転数も3000以上出るようになりました。

後編につづく>>

山下舜平大(やました・しゅんぺいた)/2002年7月16日、福岡県生まれ。小学3年で野球を始め、三宅中では軟式野球部に所属し、福岡選抜入り。福岡大大濠高では1年秋からベンチ入りし、2年夏はエースとして県ベスト8入り。20年ドラフト1位でオリックスに入団。プロ3年目の23年、開幕投手で一軍デビューを果たし、9勝3敗、防御率1.61の成績を残し、パ・リーグ新人王に輝いた

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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