元巨人プロスカウトが明かす木佐貫洋のトレードの舞台裏 交換要員を伝えられた原監督は「高木? 誰?」 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 香坂氏が続ける。

「木佐貫を交換要員とするのだから、ストッパークラスの投手がチームとしてはほしいのは当然わかっていました。でも、左のリリーフ層はどの球団も薄く、不在といってもいいチームも多くありました。もしあれが、木佐貫クラスの投手を交換要員にできなかったら、トレード成立とはならなかったもしれません。成立しなければ、何も変わらない、何も起きないのです。私は山口の負担が減らすことだけを考えました」

【外のメシを喰う重要性】

 結果的に、このトレードは成功だった。木佐貫はオリックスに移籍した2010年に10勝を挙げ、なにより先発ローテーションとして28試合に登板した。

「その後、2ケタ勝利は果たせず、2013年から日本ハムに移籍しますが、プロで13年間も投げ続けたんですよね。木佐貫のためにはよかったと思っています」

 一方の高木は巨人で4年間プレーし、時には先発起用もされるなど108試合に登板、5勝5敗22ホールドと中継ぎとして投手陣を支えた。

 木佐貫は引退後、巨人に戻り、スカウト、投手コーチを歴任。高木も引退後は巨人で一軍マネージャーや監督担当マネージャーを歴任し、現在編成本部長補佐の役職に就いている。

「ふたりとも複数の球団でプレーしたことは、引退後の仕事に役立っていると思います。『外のメシを喰う』ということはとても大事なことだと思います。球団によってのさまざまな違いは、実際にその場に身を置いてみないとわからないことで、その経験で視野が広がり、人脈だって増えます。私自身も巨人というチームのことしか知らない身であり、ほかのチームのことは知りませんでしたが、他球団調査であるこのプロスカウトの仕事をしたことで、他チームを知るということの重要性を強く感じました」

 そして、こんな裏話を教えてくれた。

「ただ高木の獲得について、当時の監督だった原(辰徳)さんはあまり乗り気でなかったのかなと思っています。原さんは先発であれ、中継ぎであれ、とにかく球の速い投手がお気に入りでした。でも高木は変化球が武器の技巧派で、ストレートの球速は最速が140キロちょっとだった。実際、トレードの話を聞いた時に『高木? 誰?』って言ったらしいです(笑)」

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