ヤクルト・近藤弘樹、選手生命の危機を乗り越え神宮のマウンドを目指す 髙津監督も期待

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 11月21日、ヤクルト二軍の戸田球場。今季のチームとしての練習は18日に終了していたが、この日、近藤弘樹は今野龍太、尾仲祐哉、山野太一とキャッチボールやランニングで体を動かしていた。練習後、来季について尋ねると「明日が契約更改で、たぶん育成だと思います」と語った。

 今シーズン、近藤は肩の大ケガからの復活に向け、以前のピッチングを取り戻すための登板を重ねていた。そこで見たのは、長く険しい道のりでも一喜一憂せず、黙々と野球に打ち込む姿だった。

再び支配下登録を目指すヤクルト・近藤弘樹 photo by Sankei Visual再び支配下登録を目指すヤクルト・近藤弘樹 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【悪夢の右肩肉離れ】

 話は、2021年5月26日の日本ハム戦(神宮)にさかのぼる。その年、前年に楽天を戦力外となった近藤はヤクルトと育成契約。春のキャンプで結果を残し、支配下登録を勝ちとった。150キロの真っすぐとシュートを武器に、"火消し役"として一軍で22試合に登板。防御率は驚異の0.96を記録するなかで、渡邉諒(現・阪神)に投じたボールは大きな放物線を描いてバックネットに直撃した。

「いろんなこと......体の切れる音とかも、すべて耳に残っているので、あの日のことは忘れることはありません。ただ、その日の映像は見ないです。やっぱりフラッシュバックするので」

 右肩の肉離れ。そこから長いリハビリ生活が始まった。朝早く自転車で戸田球場にやって来るが、チームとは離れての練習。同じくリハビリをしていた奥川恭伸や原樹理の存在は心強く、昨年5月28日には「まだ自分の肩じゃないみたい」と、トレーナーを相手にして約1年ぶりのキャッチボールができるまで回復した。

 今年は背番号「012」でスタート。6月7日には2年目の小森航大郎、新人の橋本星哉、西村瑠伊斗を相手に、実戦形式で27球を投げた。

「次は相手チームに投げたい。そうなれば球速は上がってくると思います」

 6月24日には、BCリーグ・福島レッドホープスとの練習試合に登板。最高球速は球場の表示で145キロだった。そして29日にはNPB球団である楽天戦に登板した。

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