ヤクルト・近藤弘樹、選手生命の危機を乗り越え神宮のマウンドを目指す 髙津監督も期待 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 ちなみに、フェニックスリーグでの最終登板では147キロを計測した。

「3カ月から4カ月で2、3キロずつ増えていけば......という感じで、それを継続して平均球速がちょっとずつ上がっていけばいいかなと。来年はまず二軍で150キロ出したい。それができれば、僕は(相手によって)球速が上がるタイプなので、一軍では152キロは出るのではないかなと。ただ、未知のことなのでわからないですけど」

 フェニックスリーグが終わってからは、戸田での秋季練習で汗を流した。

「肩の状態を落とすと、また上げるのに時間がかかると思ったので、定期的にブルペンに入りました。フェニックスから取り組んでいるナックルカーブやシュートも、まだ自分が思っている曲がりではないので、そのあたりも見つめ直す時間になりました」

 髙津臣吾監督は、近藤が肩を痛めたシーンを「これはやってしまったんじゃないか」と、その光景は今も頭から離れないという。

「個人的には、ここまで戻ってくることが想像できない大きなケガでした。本人はまだ満足していないでしょうけど、リハビリ期間を経て、今年やっと投げられるようになった。こうやって毎日投げられることがすばらしいこと。最後は一軍のマウンドで完全復活してほしいと思っています」

 もちろん、監督として来年の近藤に期待を寄せている。

「育成からのスタートになりますけど、支配下になるチャンスは十分にありますし、僕は2021年の優勝は近藤あってのものだと思っています。あまり早く早くと言ってはいけないのでしょうけど、一軍で通用する球威であったり、変化球であったり、キレであったり......少しでも本来の彼の姿に近づいてくれたらなと願っています。ピッチングはもちろん見たいです。その時はベンチから期待して見るのと、大丈夫かなと思いながら見るのと、おそらくそういうふうになるんでしょうね」

 11月22日、ヤクルトは近藤と来季の育成再契約を結んだことを正式に発表した。25日は神宮球場で開催されたファン感謝デーにも参加した。

「今日はプレッシャーもなく、考えることも少ないので」と、外野でファンとキャッチボールをするなど、久しぶりに笑顔を見せ楽しんだ。

「神宮に来るのは、今は"ファン感(ファン感謝デー)"くらいなので、早くここで投げたいという思いはあります。そのためにはもう一度、支配下選手として一軍で投げるのが目標なので、まずはキャンプでしっかり投げられることが大前提です。焦ってもよくないのですが、適度に焦りつつやれたらと思っています」

 近藤の不撓不屈の精神をもってすれば、きっと叶えられるはずだ。

プロフィール

  • 島村誠也

    島村誠也 (しまむら・せいや)

    1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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