岡田彰布の代打交代に真弓明信は「事情を説明しにいかなあかんよ」とコーチに詰め寄った (3ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 別に、その試合ぐらい我慢してもよかったんじゃないかということも考えた。いや、監督の采配で岡田を代えるのは間違ってはいないと思うけど、フォローだけはしておいたほうがいいよ、ということをコーチに言うたんです」

 結局、コーチの言葉は岡田の心に響かなかったのか、もしくは、コーチが岡田に説明することはなかったのか。そもそも、監督からの事前説明もなかったため、屈辱を受けた岡田はその夜から「やる気をなくして」しまい、4月30日にはスタメンを外れた。オープン戦で右足を負傷した影響で打撃の調子が上がらず、その時点の打率は1割5分台。以降は代打が中心となった。

【痛かった守護神・田村勤の離脱】

 一方、開幕当初から代打がメインの真弓は打撃好調だった。新庄が一軍に昇格し、初打席でプロ初本塁打を放った次の日、5月27日の大洋(現・DeNA)戦。1対1の延長15回裏(当時のセ・リーグは延長15回制)、二死一、二塁の場面、代打の真弓がレフト前にヒットを放つと、二塁走者の亀山が生還してサヨナラ勝ち。5時間28分の熱戦のあと、真弓はこう言っている。

「フォークがくると思ってたんだ。だから、それを待ってた。ボールはよく見えていた。バッティングは水ものだけど、若手が頑張っているし、締めるところは締めないとね。こんな時間に野球やって、ヒーローになるなんて初めてだよ」

 この試合で4連勝となったのだが、その4試合すべて1点差。4月の12勝のうち5勝が1点差で、5月も12勝した中で半分の6勝が1点差だった。接戦を制するチームになり、大量失点の惨敗も少ない反面、大差で勝つ試合はほとんどなかった。

「だからこの92年はね、ピッチャーやと思う。先発は中込とか湯舟(敏郎)が出てきて、田村が抑えでしっかりして。田村は本当に打たれなかったから。ただ、1点、2点とって、それを守りきって勝つと、何かずっと追われているみたいな感じになる。連勝もしない代わりに連敗もしないというのはよかったと思うんだけど、打線が点とれなかったのがね......」

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