「素材は超一級品!」ヤクルトのドラ2松本健吾が150キロを連発するようになった「ある特訓」とは? (2ページ目)
【DeNAのドラ1、度会隆輝のバットをへし折った】
今夏の都市対抗2回戦。ディフェンディングチャンピオン(ENEOS)vs前年の日本選手権王者(トヨタ自動車)という「事実上の決勝戦」と言われた屈指の好カードで、松本は2点リードの7回から登板した。
注目の対決は、9回裏2死一塁。1発出れば同点──という場面で訪れた。
昨大会ではMVPにあたる橋戸賞、打撃賞、新人賞の若獅子賞を獲得し、野手では史上初の三冠に輝いた度会に対し、松本はこの日最速タイとなる148キロの直球主体で押しまくる。しかし、度会もファウルで巧みに粘り、そのたびにスタンド中が大いに沸いた。
そして、カウント2-2から投じた9球目。最後は内角へのカットボールでバットをへし折り、度会を一ゴロに仕留めてゲームセット。名門ENEOSの史上初3度目の大会連覇を阻止した。
「好打者だけど負けたくない。いいコース全部カットされてメッチャ粘られたけど『絶対に抑える!』という強い気持ちで投げられた」
このシビれる対決に、笑みを浮かべて振り返った右腕は、汗を拭いながら充実感を漂わせた。
だが、好投して笑顔を見せる松本も、プロへの道のりは決して平坦ではなかった。
亜細亜大では3年秋に「寮の掃除当番をサボった咎(とが)」により、よもやの"ベンチ外"という憂き目に遭った。そして翌年、ドラフトイヤーの4年時はエースの座を任されたものの、秋の絶不調もあって無念の指名漏れ......。
そんな悔しさを胸に、松本は2年後のプロ入りを目指してトヨタに入社した。
社会人1年目は都市対抗予選で未登板ながらも、夏の本戦・準々決勝のTDK戦でリリーフに大抜擢される。すると4回を無安打&無四球、4奪三振、無失点の"パーフェクト救援"で社会人初白星をマークした。
しかも、球速が速く表示されにくく「激辛スピードガン」と言われる東京ドームで、自身初となる大台150キロを叩き出してみせた。
大舞台でいきなりの大台到達──。その理由は、不調によって登板なしに終わった都市対抗予選の直後に川尻一旗投手コーチと行なった「ある特訓」にあったという。
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