ソフトバンクのドラフトに見た「王者奪還」への本気度 育成指名を8人で終わったワケ (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 ある他球団のスカウトにそう教えられ調べてみると、昨年は1位でイヒネ・イツア(誉高/内野手)、4位で大野稼頭央(大島高/投手)を指名。その前は1位で風間球打(明桜高/投手)、3位で木村大成(北海高/投手)、2020年は1位の井上朋也(花咲徳栄高/内野手)以下、支配下ドラフトの5人すべて高校生だった。

「今回、ジャイアンツが社会人を4人続けて指名したのもそうだと思いますけど、やっぱり『もうなりふり構っていられない。とにかく優勝だ!』みたいな感じで、プレッシャーをかけられたんじゃないですかね。ジャイアンツは阿部慎之助監督、ソフトバンクは小久保裕紀監督......どちらも切り札を出してきて、今回のドラフト指名選手を見ても、優勝宣言に思えますね」(前出・他球団スカウト)

 3位の廣瀬隆太は、今季台頭した柳町達、正木智也の高校(慶應高)、大学(慶應義塾大)の直系の後輩。4年秋の早慶戦でも、彼らしい打った瞬間にそれとわかる豪快な一発を放ち、クソボールでもスタンドに放り込む意外性付きの"超長打力"を引っ提げ、高度なサバイバルに挑む。

 打者に対する洞察力と打ちとるプランニングができる4位の村田賢一は、「右投げの和田毅」に思えて仕方ない。ソフトバンクには東浜巨という絶好のお手本がおり、村田もこの豪華投手陣の個性的なワンピースになれる人材だろう。

 右ヒジの故障がなかったら上位指名も十分にあった6位の大山凌は、まず身体能力が抜群。ライナー軌道で80mほど投げられる地肩の強さに、スピードと力強さを兼ね備えた全力疾走は50m5秒台。身のこなしが敏捷だから、けん制やフィールディングも一級品。フィジカルの不安が完全になくなれば、一気に台頭してくる可能性を秘めており、故障明けとはいえ、この投手をこの順位で指名できたのだから、やはり今年は間違いなく歴代有数の投手大豊作のドラフトだった。

プロフィール

  • 安倍昌彦

    安倍昌彦 (あべ・まさひこ)

    1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。

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