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ソフトバンクのドラフトに見た「王者奪還」への本気度 育成指名を8人で終わったワケ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko

 四軍まで組織化して、育成選手だけで今季は54人(投手30人、野手24人)まで膨れ上がっている状況を鑑みれば、そう簡単に大量指名はできないだろう。

 ちなみに、2020年から昨年までの3年間でソフトバンクが指名したのは支配下16人、育成33人の計49人。そのなかで一軍戦力として貢献できたのは、今年の大津亮介(投手/22年ドラフト2位)と、昨年の野村勇(内野手/21年ドラフト4位)ぐらいだろうか。しかもファームに、はっきり台頭の兆しを見せる新鋭が見当たらないのもちょっと寂しい。

 チームも3年連続優勝を逃すなど、オリックスに"王者"の地位を奪われ、今年のドラフトははっきり「一軍強化」をテーマにした指名だったように見えた。

 実戦力の高さに加え、左腕というアドバンテージを有する武内夏暉の1位入札はチーム事情からすれば当然だし、外れ1位の前田悠伍にしても限りなく即戦力に近い高校生左腕だ。

 さらに、大学生3人、社会人ひとりの投手を指名。育成ドラフトでも大学生ふたり、独立リーグからひとり。なかでも育成7位の藤田淳平は、飛び抜けた球速はないものの、リリースの見えづらい鋭い腕の振りからのクロスファイアーは絶品。打者にとってこの打ちづらさは立派な武器だ。

 ここ1、2年、スカウトとの会話によく出てくるようになったのが"数値"だ。球速150キロとかの"数字"ではなく、回転数、ホップ成分、変化量などの計測数値である。

 2位で指名した岩井俊介は、夏の学生ジャパン候補合宿で2600回転という驚異の数値をマークした。プロの一軍クラスでも平均2400回転と言われるなか、アッと驚く「球質」でクローズアップされた。

 同様の見地から評価されたのが、5位の澤柳亮太郎である。ストレートは2500回転近く、カーブも驚きの落下数値を叩き出したと聞いた。

【なりふり構っていられない】

「いつももソフトバンクなら4位ぐらいまでに必ず何人か、将来の布石を打ってくる。それが今年は(東京)六大学のふたりでしょ。ちょっとびっくりしましたね」

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