巨人と中日の「10.8決戦」を今中慎二が振り返る 落合博満の一打に「怒りがおさまらなかった」 (4ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Kyodo News

――ロッカーで誰かに声をかけられましたか?

今中 いや、誰かと話した記憶がないですし、僕に声をかけられる雰囲気ではなかったと思いますよ。巨人の先発の槙原寛己さんは、僕よりも早い2回裏に降板して2番手の斎藤雅樹さんに代わっていましたけど、斎藤さんのピッチングはロッカーのモニターでも全然見ていませんでした。けっこう長く呆然とした後、立浪さんがケガをしてしまった頃(8回裏)にベンチに戻ったことはなんとなく覚えています。

 あと、この試合に限らず、自分は基本的にベンチにいないんです。自分が先発の試合中でも、投げ終えたらすっとロッカーに行っていました。ビジターでもそうなのですが、"消える人"なんです。

――その理由は?

今中 味方の攻撃を見たくないんです。攻撃を見て気持ちが入ってしまうと、チャンスで点が入らなかった時にダメージが残るので。とにかく投げることだけに集中していましたね。

(中編:落合博満から仕掛けられた心理戦 「俺はカーブを狙う」の挑発に「一球も投げられなかった」>>)

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

プロフィール

  • 浜田哲男

    浜田哲男 (はまだ・てつお)

    千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

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