巨人と中日の「10.8決戦」を今中慎二が振り返る 落合博満の一打に「怒りがおさまらなかった」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Kyodo News

【川相昌弘の三振時のうなずきに「ん?」】

――先発を任されたタイミングはいつ頃でしたか?

今中 1週間ぐらい前には言われていました。横浜戦(10月2日)で投げたのですが、その試合に勝って、「次の登板は最終戦になるぞ」と。10月6日には巨人がヤクルトに勝って、中日が阪神に負けたら巨人が優勝という追い込まれた状況になりましたが、うちは山本昌さんが完投で勝って、巨人がヤクルトに負けて同率首位になったんです。

――試合当日のコンディションはどうでしたか?

今中 前の試合で登板した時にちょっと風邪気味でしたし、シーズンの最終盤で肩の疲れも多少ありましたし......。投げられない状態ではありませんでしたが、万全ではなかったですね。

――今中さんは、この試合を迎えるまでの同シーズンの巨人戦の成績が5勝2敗1セーブ。さらにナゴヤ球場での巨人戦は11連勝中でした。優勝がかかった特別な試合ではありましたが、自信を持って臨めたのでは?

今中 僕の場合、この試合に限らず、どの試合も自信を持って臨んだことはありません。ただ、巨人戦はよく投げていたので、「また巨人戦?」みたいな気持ちはありました(笑)。確かにナゴヤ球場ではそんなにやられたイメージはなかったのですが、東京ドームではやられることがあって。もともと東京ドームに苦手意識があったので、露骨に成績に出ているはずです。

――試合は6-3で巨人が勝利。2回表に巨人の4番の落合博満さんのソロ本塁打などで2点を先制されました。巨人打線と対峙した時、それまでの試合と違う何かを感じましたか?

今中 初回にちょっと違う感覚がありましたね。僕は初回を三者凡退で抑えることは滅多になかったのですが、その試合ではあっさり三者凡退で終わらせることができた。結果だけ見ればいいことなのですが、自分の調子がよくて三者凡退に抑えられたわけではないですし、初回から飛ばしていたわけでもありませんでした。

 あと、2番の川相昌弘さんが見逃し三振した時にうなずいていたのですが、「なんでうなずきながらベンチに帰っとんのかな」と、ちょっと不気味でしたね。うなずきながらベンチに帰るなんて滅多にないじゃないですか。だから、「ん?」という感じは受けました。

――川相さんがうなずいていた意味は、その後わかりましたか?

今中 後になってみんなが言っていたのは、"癖"がどうのこうのということ。つまり、僕の癖を見抜こうとしていたようで、その確認のうなずきだったのかなと。ただ、僕にとって痛かったのはそのことではなく、落合さんに打たれたことです。その後に打ち込まれてしまった発端なので。

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