「阪神の守備練習には緊張感と熱量を感じた」 高木豊が力説するキャッチボールの大切さと守備に対する意識 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

 今年、そのあたりのことに最も緊張感を持って取り組んでいたチームは、リーグ優勝した阪神です。私は春のキャンプを視察したんですが、特に全体の守備練習の時にいい緊張感と熱量を感じました。「珍しいな」と思いましたよ。明るく取り組むのが主流になっている時代に、ひとつひとつのプレーに対して意図を確認するなど空気がピリッとしていましたから。

 エラーはどのチームでもします。ただ、守備練習に熱量をどのぐらいかけたか、どんな意識でやっていたかによって、エラーの意味合いが変わってくるんです。

――具体的に、エラーの意味合いがどのように変わるんですか?

高木 熱量をかけて練習しておけば、打球を追う際に簡単にあきらめたりしないはずですし、「これだけ練習したんだからエラーはできない」と必死になるでしょうが......「適当に練習していて、エラーしちゃった」ではまったく先がないですよね。

 阪神の話に戻ると、本拠地の甲子園が土のグラウンドということもあって、エラーの数自体は多いんです。ただ、守備への意識が高いからか、エラーが失点に絡むケースは少ない。一方で、またDeNAと広島の試合(7月17日)になりますけど、広島の秋山翔吾のライト前ヒットを蝦名達夫がチャージせず、二塁ランナーを楽に生還させてしまったこともありましたよね。ああいった怠慢プレーは、練習に熱量をかけていれば起こりません。

――練習に熱量をかけるためには、コーチの働きかけが必要なのでしょうか。

高木 コーチや、監督が持っている緊張感でしょうね。ただ、キャッチボールなど基礎的なことをはじめ、守備に関しては全体的になんとなく緩いような気がしますし、反復練習が足りないんだと思います。内野手が、なんでもないゴロを捕ってファーストに送球する際、「そんなに慌てるか?」というエラーもけっこう見ますし。

 2020年に菊池涼介(広島)が、二塁手として史上初の守備率10割を達成しました。その記録は、とてつもなくハードルが高そうに見えるじゃないですか。実際にそんなに低くはないんですけど、守備への意識を疎かにしていなければ、達成不可能なことではないんですよ。

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