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女子野球界のレジェンド・里綾実が語る「5年ぶりワールドカップ開催の意義」と「女子野球の未来」 (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 歳を重ねることでパフォーマンスが落ちるどころか、経験を生かし、さらなる高みを目指している。

「トレーニングも走り込みもできていますし、コントロールの精度や配球は経験を生かしてもっと詰めることができると思うので、がむしゃらに力任せではなく、冷静にできたらいいなと取り組んでいます」

【女子野球を当たり前の文化に】

 そして里は、女子野球を未来へと受け継いでいくため、その思いを行動に移している。『一般社団法人 野球はみんなのスポーツ』を立ち上げ、女子野球の普及活動に努めるとともに、所属するチームでも日本代表でも投手陣最年長となったことで、「思いの継承」を大切にしている。

「何もないところから切り拓いてきた先輩たちの思いを、次の世代に伝えていきたいと思っています。そうした先輩たちがいたからこそ、私たちが今、当たり前にできている大会などがあるので......」

 5月下旬から6月上旬にかけて香港で行なわれたアジアカップでは、多くの海外選手からサインや写真撮影を頼まれ、気さくに応じた。また宿舎では、同部屋となった21歳の小野寺佳奈(巨人)に惜しげもなく自身の経験などを伝えた。

 8月に行なわれた第18回全日本女子野球硬式クラブ野球選手権決勝では、小野寺が西武の里に投げ勝ち、完封勝利で巨人の初出場・初優勝に貢献。「次世代のエース候補」として、今回のワールドカップでも活躍が期待されている。

 なにより今回は、2014年の第6回大会(宮崎)以来となる日本開催とあって、女子野球の魅力を発信するためには、この上ない舞台である。里は今大会の意義について、次のように語る。

「"女子野球を当たり前の文化に"という女子野球界が掲げるスローガンのために、ただ勝つだけではなく、女子野球を知ってもらうことはもちろん、元気や感動、憧れを与えられるプレーをしたいです」

 5年という長い年月が経ちながらも、変わらないどころか、むしろ上がり続ける向上心と女子野球界の発展への思いを胸に、里綾実は懸命に腕を振る。

著者プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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