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なぜ阪神はセ・リーグを独走したのか? 広岡達朗は「岡田彰布流コミュ力」と「選手との距離感」を評価 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

「打撃に関しては、波がありすぎるのは如何ともしがたいが、その要因のひとつは5番の佐藤(輝明)だ。軸となる佐藤を打撃に専念させるためにサードに固定したが、想像以上に打てていない。4番に座る大山(悠輔)の四球の多さを見てもわかるように、後続を打つ打者に怖さがない。佐藤は二軍落ちを経験するなど荒療治を施したが、その効果はまだ現れていない。

 ただ8番の木浪(聖也)が好調で、彼が出塁して1番の近本(光司)が還す得点パターンができたのは大きい。とにかく各ポジションにライバルが設置されることで相乗効果が生まれ、適材適所で若手にもチャンスを与えている。ほかのチームを見てみろ。ヤクルトは村上(宗隆)の不調がそのまま順位に反映されているし、巨人はコロコロ打順を変えても浮上できずにいる。阪神以外のチームが情けなさすぎる」

 決して打線は好調というわけではなかったが、それでもドラフト1位ルーキーの森下翔太が一本立ちしたことは大きい。森下については、開幕スタメンを勝ちとったが、打てないと見るやすぐさま二軍に落とし、二軍で結果を残せばすぐに上げてチャンスを与えた。結局、二度のファーム落ちを経験したが、結果を出せばチャンスをもらえるということがモチベーションにつながり、夏場以降は3番としてチームに貢献した。

「若手を起用したら、最低でも10試合は使い続ける。1試合や2試合で結果など出るはずがない。選手も1、2試合で結果を出さなければというプレッシャーがかかってしまう。育成とチームの勝敗は相反すると言われているが、試合に勝ちながら選手を育てていくのが本当のプロフェッショナルな監督なんだ。そういう意味で、今年の岡田はよく我慢しながら戦った」

【ジェネレーションギャップの埋め方】

 いくらコミュニケーション能力が高くとも、指揮官の目指す野球を具体的に示し、理解されなければチームとして機能しない。ここまでの戦いを見ると、岡田監督の目指す野球が選手に浸透しているように映る。

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