「今年の阪神は間違いなく優勝する」名コーチ・伊勢孝夫が「岡田采配の妙」を解説 (2ページ目)
打順にしてもそうだ。シーズン当初から、1番・近本光司、2番・中野、4番・大山、8番・木浪聖也はほぼ不動だ。なかでも、一時はチームトップクラスの打率を残していた木浪だが、並の監督なら打順を上げたくなるところだろう。でも岡田監督は8番にこだわった。
その理由は、8番が出塁することによって、上位へと打線がつながる。そこを重要視しているからだ。つまり、単純にひとりの打者の好不調で打順を考えるのではなく、打線全体の流れを考える。
【先を読む岡田采配】
また、岡田監督らしいなと思ったのは、「負けてもいい試合」を見極めていることだろう。たとえば点差が開いた場合は、何がなんでも1勝にこだわらない。そういう時は投手をしっかり休ませ、次戦に備える。
そういえば岡田監督は将棋を好み、腕前も相当のものらしい。私はやらないのだが、ヤクルトのコーチ時代に将棋好きの古田敦也がいたからよくわかるのだが、将棋をする野球選手に共通しているのは、数手先を読み、目の前の一手を決める。そうした駒の運びを、野球に応用しているということだ。捕手なら投手のリード、監督なら選手起用を含めた采配に反映している。
試合の展開を読むことは、将棋を指さない監督でもやっていることだが、岡田監督は手数の多さとバリエーションの豊富さが人並外れている。たとえば、試合の流れを重要視すれば、7、8回まで平気で先発投手を引っ張り、どうしても得点がほしい場面では植田海、島田海吏、熊谷敬宥といった俊足を代走に出し、ここがヤマ場と感じたら中盤であっても代打の切り札を使う。それぞれの特性を生かし、効果的に起用している。
作戦にしても、奇をてらうことなく、堅実な野球に徹している。だから大きな破綻がない。そのぶん、思わぬ大量点になりづらいという傾向はあるが、岡田監督としては確実に1点を積み重ね、投手陣で逃げきるという野球に徹しているのだろう。
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