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鈴木誠也が明かした「どうせ打てない」不安 復調のカギは「完璧主義」ではなくなること (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

【終盤戦で活躍するために必要なこと】

 それでも心強いのは、8月上旬に4日間のスタメン落ちを経験して以降、鈴木の調子が上向きに見えることだ。9日のメッツ戦で3安打と爆発してスタメンに復帰し、9日からの5試合で19打数7安打、2本塁打4打点と復調の兆しを見せている。

「スイング以前の問題で、本当に考え方だと思うんです。練習ではまったく悪くないので、あとは試合で慌てずに打席に入れるかどうか。どうしても打ちたいという力みが勝ってしまう。もう少しリラックスして打てれば、何か違ってくるのかなと思います」

 自身の打撃をそう分析していた鈴木は、落ち着いて打席に立つ術を見つけたのだろうか。ニューヨークでのメッツ戦では、スタジアムを訪れていた馴染みの先輩、内川聖一と話したことが「気分転換になった」とも述べていた。きっかけはどうあれ、打席でより積極的になり、フィールドでも笑顔が目立っていたのはいい兆候だろう。

 チームとしては、カブスは6月9日の時点で26勝36敗と10の借金を背負い、7月20日になってもナ・リーグ中地区で首位まで8ゲーム差、ワイルドカード最終枠となる3位のチームにも7ゲーム差をつけられていた。

しかし、そこから8連勝で急上昇。8月1日のトレード期限までには内野手のジェイマー・カンデラリオ、投手のホセ・クアスを獲得して戦力アップした。8月15日時点で地区首位のブリュワーズと3.5ゲーム差、ワイルドカード争いでも3位に1ゲーム差まで迫っている。

 カンデラリオの加入と、やはり外野手のマイク・トークマンの打撃が好調だったゆえに鈴木のプレーチャンスが減ることになったわけだが、それでも終盤戦は、一定以上の出場機会を与えられるだろう。

ここから先の重要なゲームで働けば、少なからず評価は回復できる。チームをプレーオフに導くような活躍ができれば、周囲は前半戦の不振も忘れてくれるだろう。ベースボールが盛んな都市のファンの気質はそんなものだし、カブスに関しても例外ではないはずだ。

「完璧さを求めるより、自由にプレーしたほうが継続的な成功が得られるもの。(責任感の強さの)おかげで彼はここまでやってこられたのだろう。ただ、少し冷静になり、このゲームでは誰も完璧ではいられないことに気づいてほしい」

 ロス監督のそんなメッセージは鈴木に届くのか。まだ逆襲の時間とチャンスは残されている。完璧主義者がいい意味で力を抜くのは簡単なことではないが、フィールドでよりリラックスし、ベースボールの楽しさを思い出すことができれば、鈴木の魅力的なツールが大事な時期に飛翔を始めるかもしれない。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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