阪神・金本知憲の天井直撃打球を1軍審判デビュー戦で誤審→ネットで批判の的に 元NPB審判が語る「正しくて当たり前」の重圧 (2ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru

●さんざん叩かれ神経衰弱

 日本プロ野球機構(NPB)のコミッショナーが坂井さんに下した処分は、グラウンドルールの確認を怠ったとして厳重戒告、当該試合の出場手当の50%減額。坂井さんは自分の処分よりも周りへかけた迷惑で頭がいっぱいになったという。

「その試合で審判を務めていた3人や審判部長、審判部特別顧問にも厳重注意が課されてしまいました。まだまだ経験の浅かった僕を1軍の審判に抜擢してくれた方々の顔に泥を塗ってしまった。取り返しのつかないことをしてしまった。

 あの日、僕を気遣ってネクストバッターにいた城島健司さんが、抗議の行なわれている最中に『こんなミス、気にするな』とそっと声をかけてくれたり、審判の先輩方は『4年間ファームで頑張ってきたんだから、たった一度のミスで辞めなくてもいい』と励ましてくれたり。一度は辞表を出そうと決めたものの、まずは1年間、しっかり審判を務めてみようと思い直しました」

審判時代の坂井さん 写真/本人提供審判時代の坂井さん 写真/本人提供 だが、心身のショックは大きかった。

「誤審の日から連日眠れず、記者の目も気になり、ネットでもさんざん叩かれました。テレビではどの局も僕の誤審を取り上げていましたね。相当弱っていたので、自責の念がますます強まっていきました。

 その誤審から2日後、福岡へ移動しての2軍の試合。その試合中に熱中症で倒れてしまって救急搬送されました。それからひと月経たない間に、遠征先の高知のホテルでも倒れて病院へ搬送され、そのまま1週間ほど入院しました。高知では心臓を悪くしてしまい、下手すると命を落としかねない状況で。両親や審判の先輩も見舞いに来てくれました」

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