阪神・金本知憲の天井直撃打球を1軍審判デビュー戦で誤審→ネットで批判の的に 元NPB審判が語る「正しくて当たり前」の重圧 (3ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru

●落合博満は「審判からの信頼が厚かった」

 プロの審判という仕事は正しくジャッジができて当たり前と思われ、減点方式で評価されてしまう。契約は1年更新。選手のような逆転ホームランはなく信頼を積み重ねていかなければ続けることはできない。

「退院後、僕は1回死んだんだと思ってやり直しを決意しました」

 当時25歳で、大卒なら働いてまだ3年目。

「友人や先輩からは『自分のミスが全国放送で取り上げられる経験はそうそうあるものじゃない』『1軍に抜てきされたのも2軍でずっと信頼されるジャッジを積み上げてきたからこそだよ』などとポジティブな言葉をいろいろかけてもらいました。

 当時のオリックスの新井宏昌・2軍監督、ソフトバンクの鳥越裕介・2軍監督など、僕が誤審後の2軍の試合で倒れた現場にいた方たちには、顔を合わせるたびに『坂井、頑張れよ』との言葉をいただいたり、広島の山内泰幸・投手コーチは1軍の試合中の投手交代でマウンドに上がる時に球審の僕に声をかけてくれたりしていただいたおかげで、心身ともに少しずつ回復していきました」

写真/本人提供写真/本人提供 審判と監督といえば、プロ野球ファンならば落合博満氏を思い浮かべる人も少なくないだろう。2010年、試合中に森健次郎審判の体調不良を見抜いたことは今でも語り継がれている。

「落合さんは審判とのコミュニケーションをとても大切にしていました。何気ない会話からジャッジのクセを見抜くという目的もあったと思いますが、ルールや野球のあり方についてよく意見を交わしていました。審判からの信頼はとても厚かったですね。

 ちなみにナゴヤドームの両翼のポールは41メートルと高い。じつはこれ、リクエスト制度導入にあたって、まずは審判が見えやすいように、球場を改修、適切にジャッジができるようにと、落合さんが球団に提案してくれたからなんです」

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