斎藤佑樹「5回4失点のピッチングでも勝つチャンスがあるんだ」プロ初先発で得た自信と1年目に味わった地獄 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 しっかり踏み込まれていましたし、外の真っすぐを狙われていたのかもしれません。それでもあのコース、あの高さ、しかも自信を持って投げた真っすぐを右中間の一番深いところへ放り込まれたホームランでしたから、これがプロの凄味なんだと肝に銘じました。もっと踏み込ませないようにインコースへしっかり投げなきゃいけない、勝負球はやっぱり変化球になるのかなと思わされた一発でした。

【5回4失点で勝利投手に】

 1回表に2点をとられて、その裏、ファイターズは(マリーンズの先発・大嶺祐太から)3つのフォアボールで満塁のチャンスをつかみました。ここで(マイカ・)ホフパワーがバッターボックスに入ります。あの時のことはよく覚えています。ツーアウトだったので僕はベンチ前でキャッチボールをしていましたが、オープン戦でホフパワーを見ていた時のイメージから、何となく『初球の真っすぐをフルスイングして、満塁ホームランを打ちそうだな』という予感があったんです。もちろん打ってほしいと願っていたことも重なって、打った瞬間は『えっ、ホントに打ったの?』とビックリ。喜びよりも驚きが先にきました。ホントに打ってくれたホフパワーに『すごい』と思っていましたね(笑)。

 あの試合、僕は5回にも2点をとられましたが、打線が6点をとってくれて、4点リードしたまま、5回でマウンドを降りました(5回、92球、被安打6、奪三振2、無四球、失点4、自責点1、15のアウトのうち11がゴロアウト)。

 その後をリリーフ陣がゼロに抑えてくれて、僕は勝利投手になることができました。5回しか投げられず、4点もとられたのに、ホフパワーが逆転の満塁ホームランを打ってくれて、僕に白星がついた......あの時に感じたのは、5回4失点のピッチングでも勝つチャンスがあるんだなということでした。

 僕、プロでは完璧なピッチングをしなければ勝つ資格はないと思い込んでいたんです。でも味方に助けてもらいながら、こういうテンポで投げて、こういう試合運びをしていけばプロでも勝つチャンスがある。

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