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DeNA松尾汐恩が経験した「濃密な時間」 大田泰示のベンチでの姿から学んだこと (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Sankei Visual

 この言葉で松尾の気合がさらに入ったのは言うまでもない。そして練習中、相川コーチにかけられてうれしい言葉があった。

「トレーニングをしている時に、相川コーチから『キャンプの時とは別人になったな。キャッチャーとしての動きとか、そのあたりは変わってきたと思うよ』と。ありがたかったですし、もっと努力しないといけないなって思いました」

 練習を終えると休憩に入り、軽食を摂るなどしばしのリラックスタイム。先輩たちのオンとオフの切り替えの様子をじっくりと観察した。松尾の趣味は"人間観察"である。

 太陽は徐々に傾き、試合開始時刻が迫ってくる。再びアップでグラウンドに出ると、すでに客入れは始まっており、騒めくハマスタの鼓動を感じた。

「ハマスタで初めてのナイターでしたし、すごくテンションが上がりました。オープン戦とは雰囲気がまったく違うなって」

 黄昏のなか、グラウンドには照明が灯り、カクテル光線を浴びて躍動する選手たち。さらに詰めかけたファンの地鳴りのような大声援に松尾は圧倒された。また一方で、心からこの場でプレーをして活躍したいと思った。

【いつか一軍の戦力になれるように】

 結果的に松尾は翌々日に登録抹消され、一軍帯同されたのはわずか2日間だった。マスクを被ることはおろか、打席にも立てず、チームの力にはなれなかった。それでも、冒頭で述べたように学ぶことは多かった。

 初日は今永昇太が完投勝利、2日目は東克樹の完封勝利を目の当たりにした。ふたりとも春先にファームで松尾が受けていた投手である。やはり、あの時とは見え方は違ったのだろうか。

「やはり今永さんは真っすぐの質はもちろん、マウンドでの立ち居振る舞いはさすがだなと思いましたし、東さんは真っすぐに加え、変化球の組み立てなど勉強になるところが多く、ファームで投げていた時とは一段も二段も違うなって」

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