阪神は好調の背景に「アメとムチ」采配、巨人・坂本勇人は「復調すると思っていた」 真中満がセ・リーグ序盤戦を評価 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

●新外国人が機能しない中日は苦戦が続く?

ーー今季から就任した新井貴浩新監督率いる広島はどう見ていますか?

 僕がすごくいいなと思うのは、菊池涼介を1番に固定している点ですね。カープの歴代監督って、野村謙二郎さん、緒方孝市さん、そして佐々岡真司監督と、「2番・菊池」にこだわっていた印象があるんです。

 でも、菊池の場合は長打力も意外性もあるから、相手からするとすごくイヤなバッターなんです。僕らとしても、菊池が2番で送りバントを決めてもらったほうが「あぁ、よかった」という感じでしたから。

ーー菊池選手を1番に抜擢したという点でも、新井監督は評価できますか?

 菊池の個性を生かすには1番打者というのは、すごくいいと思いますね。そういう意味では、相手が嫌がりつつ、個々の特性も生かした選手を見る目の確かさというものは感じました。それに何より、チームの雰囲気が一気に明るくなったのも新井監督の功績じゃないのかな?

 今までのカープなら、エラーやミスがあると、すごく叱られるというのか、厳しいイメージあったけど、新井監督のコメントは優しいし、野間峻祥のケースのように、ミスをしてもきちんとチャンスを与える姿勢も、明るさを生み出していると思います。

ーーヤクルトについては、後編で詳しく伺っているのでそちらを見ていただくとして、就任2年目を迎えた立浪和義監督率いる中日は、今シーズンも苦戦が続いています。

 ドラゴンズの場合、投手力はいいんだから、誰が見ても「バッティングが課題だ」ということはわかっているわけですよね。だから、新外国人のアキーノやカリステを獲得して、アルモンテも復帰させてまで、衰えの目立つビシエドに代わる大砲をチームに加えたけど、いずれも思ったような成績を挙げていないのが誤算ですね。

ーーヤクルトのケースもそうですけど、打線の不振によって、そのしわ寄せが投手陣にも及んでいるように見受けられます。

 やっぱり、打線が弱いと、投手としては「絶対に先取点は許したらダメだ」という思いになって、本来の力を発揮できないケースも多いと思います。髙橋宏斗なんかストレートでガンガン押していけばいいのに、どうしても「丁寧なピッチングをしよう」として、本来の持ち味を損なっている気がします。

ーー現役ドラフトでDeNAから加入した細川成也選手が好成績を残しています。

 ベイスターズ時代から、その素質は高く評価されていただけに「ようやくか」という思いもあるけど、細川がいなかったら、ドラゴンズはさらに大変なことになっていたと思いますね。新天地で若い才能が開花するというのは、現役ドラフトの本来の目的でもあるし、本当によかったと思います。

ーーでは最後に、セ・リーグのペナントレースは今後、どうなっていくと思いますか?

 現状を見ると、タイガースとベイスターズの安定感は群を抜いていますね。ただ、ジャイアンツは若い先発投手たちがここからさらに飛躍するとか、スワローズは打線が早い時期に本調子を取り戻すとかすれば、まだまだ追い上げは可能。

 実際のところ、ドラゴンズはちょっと厳しいかもしれないけど、それ以外の5球団は、最後まで混沌とすると思うので、ぜひ下位4球団はタイガースとベイスターズに食らいついていってほしいですね。

後編<村上宗隆の「打順変更はアリ。2番でも3番でもいい」 真中満が指摘するヤクルト不調の要因と村上の技術的課題>

【プロフィール】
真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

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