審判歴38年の名アンパイアが選出したポジション別「名手ベスト5」 守備の達人から意外なプレーヤーの名前も

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro,Sankei Visual

 名選手の「これぞプロ」という技を間近で見られるのが審判員だ。今回、昨シーズンまでプロ野球史上最長となる38年間NPBの審判員を務めた橘髙淳(きったか・あつし)氏に、守備の名手を各ポジション5人ずつ選んでもらった。どの選手のどこがすごいのか語ってもらった。

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【浅尾ー谷繁バッテリーは最強】

── 投手は、最多勝や最優秀防御率のタイトルを獲得した選手がゴールデングラブ賞に選出されることが多いですが、橘髙さんから見た「フィールディングがうまい投手」「牽制がうまい投手」は誰でしたか。

橘髙 桑田真澄投手(元巨人ほか)、斎藤雅樹投手(元巨人)、野村弘樹投手(元横浜)、松坂大輔投手(元西武ほか)、浅尾拓也投手(元中日)です。この5人の守備センスはとにかく抜群でした。マウンドを降りてきてのバント処理、投手ゴロをさばいての1−6−3のダブルプレー、ライナー捕球、一塁牽制、クイックモーション......。守備や牽制のうまさは、自らのピンチを未然に防ぎます。

 試合中盤から終盤の勝負どころでマウンドに上がった浅尾投手は、リリーフ投手として初めてゴールデングラブ賞に輝きました。

 また野村投手は、一塁手としてもやっていけたんじゃないでしょうか。それほどグラブさばきは見事でしたね。

── 捕手はいかがですか。キャッチング、スローイング、肩の強さが基準になると思います。

橘髙 まずキャッチングなら、谷繁元信選手(元中日ほか)が群を抜いていました。昔の捕手のキャッチングは、ストライクゾーンに入れるようにミットを動かしていたのですが、谷繁選手は捕球の際にミットが動かない。最近流行りの"ビタ止め"というやつですね。

 ストライクとボール、どちらにコールしてもいいような際どい球でも、私のジャッジと谷繁選手のズレは少なかったかもしれません。谷繁選手は「ちょっと甘かったですかね」と正直に申告してくれました。

 谷繁選手は1998年に横浜を日本一に導き、一流から超一流になったと思います。中日移籍以降は、捕手としての技量にさらに磨きがかかったように思います。

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