長嶋茂雄監督から「準備しなくていい」の直後に「代打・篠塚」 ミスターの直感は多くの人を困惑させ、惹きつけた

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

【現役引退の年にミスターに「やらせてしまった」こと】

――どんなやりとりがあったんですか?

篠塚 当時は、ちょうどセカンドのポジションが世代交代される時期でした。ただ、自分としてはプロ入り19年目だったので、「20年はやりたいな」という思いがあったんです。

 僕は日本シリーズで西武と対戦して日本一になった年(1994年)に現役引退となったんですが、シリーズが始まる時にミスターに呼ばれて話をしたんです。自分としてはもう少し現役を続けたいこと、引退するのであれば「今年で辞めます」と前もってファンのみなさんに宣言した上でプレーしたいということを伝えました。

 ただ、ミスターの立場としては次のセカンドを育てていかなきゃいけない。それで「日本シリーズが終わったら、また話をしよう」となったんです。それで日本一になった日、ミスターから再び呼ばれた時に、僕から引退する意志を伝えました。

――篠塚さんから伝えたんですね。

篠塚 シリーズ開幕前にあのような話をするっていうことは、「『もう、いいだろう』ということだろう」と感じていましたから。逆に「もう1年やってみないか?」ということであれば、そういう話もしてこなかったでしょうし。

 その年は、僕のバッティングの状態が悪い時にミスターが早出で状態を見てくれたりしたのですが、ベテランの自分が「やらせてしまった」という気持ちになって。ミスターに変な気を使わせてしまったなと。そういうこともあって、「今年で引退します」という話をしたんです。

――長嶋監督からは、どんなことを言われましたか?

篠塚 「ユニフォームを脱いだあと、どうするんだ?」と聞かれたので、「野球はもちろん、ほかのスポーツも含めて、ちょっと外から勉強したいです」と答えました。ミスターが第一次政権を終えたあとにプロ野球の解説をはじめ、幅広い分野で活動されていましたが、僕もそのようなイメージを持っていたので。

 でも、秋のキャンプの時期にミスターから電話がかかってきたんですよ。「来年、守備のコーチをやってくれないか? シノもいろいろ相談する人もいるだろうけど」って。「いや、そんなことはないです」と言いましたけどね(笑)。それで引き受けたんです。

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