なぜ30歳の元メジャーリーガーが独立リーグへ? 茨城アストロプラネッツのGMはどうやって選手と代理人を口説き落としたのか (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Getty Images

【NPBが欲しがる元MLBの肩書き】

 そうして獲得したのが、アレン・ハンソンだ。

 ドミニカ共和国出身の30歳で、MLBには通算4年間在籍して261試合に出場。ショートとセカンド、さらに外野を守り、打ってはスイッチヒッターだ。2017年にはMLBで11盗塁を記録し、翌年には8本塁打を放っている。

 オリックスに新加入したゴンザレスはトップレベルのユーティリティプレーヤーだが、こうしたタイプが来日するケースは決して多くない。二遊間は日本人選手に任せ、一塁や三塁、外野を守るパワーヒッターが"助っ人"の条件になりやすいからだ。

 色川GMは新境地を切り開くべく、ハンソンの獲得に動いた。

 新外国人選手の条件でこだわったのが、元メジャーリーガーという点だった。昨季はあえて、この肩書きがない選手を獲得したという。アメリカ球界にはメジャー経験がなくても実力のあるパワーピッチャー、パワーヒッターが数多くいて、NPB球団の需要があるのかを探りたかったからだ。

 たとえば、昨季在籍した右腕投手デイビッド・ペレズはBCリーグで球速150キロ超を連発した。NPB球団との移籍交渉はいい線までいったが、最後の最後でまとまらなかった。NPB球団の現場担当者が獲得を提案しても、決裁権を持つ上層部が首を縦に振らなかったという。

 NPB球団が"元メジャーリーガー"を欲しがるという話は、代理人にも聞いたことがある。元MLBという肩書きは華やかで、メディアの露出も有利に働きやすい。

 そうした点から、色川GMは200試合以上のメジャー経験を持つハンソンを獲得した。

 だが、疑問がひとつ残る。なぜ、それほどの大物が日本の独立リーグにやって来ることになったのか。

 実際、条件面ではほかのリーグより劣ると、色川GM自身も認める。

「給料はメキシカンリーグに絶対勝てません。アメリカのアトランティックリーグにも、興行レベルはまったく太刀打ちできない」

 メキシカンリーグはMLB、NPB、KBO(韓国プロ野球)に次ぎ世界で4番目の規模を誇るプロ野球リーグで、外国人選手は月給100万円前後が目安とされる。アトランティックリーグは月給15〜20万円程度でBCリーグと大差ないが、数あるアメリカの独立リーグで最もレベルが高く、MLB球団との契約を狙いやすいというメリットがある。

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