谷繁元信が注目している捕手...高卒ドラ1松尾汐恩、移籍の森友哉、捕手専念の坂倉将吾はどうか? 打てる捕手は「スーパーキャッチャー」
谷繁元信インタビュー後編
今季注目のキャッチャー
前編を読む>>【谷繁元信のセ・リーグ順位予想】3連覇のかかるヤクルトは「投手陣が少し不安」
ペナントレースでカギを握るポイントのひとつが、"扇の要"と言われる捕手の働きだ。まもなく訪れるプロ野球の開幕を前に、現役時代にゴールデングラブ賞を6度受賞した谷繁元信氏に今季注目の捕手を挙げてもらった。
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今季から捕手に専念する広島・坂倉将吾この記事に関連する写真を見る
今季すごく興味を持っているのが、広島の坂倉将吾です。昨年まではサードやファーストでも起用されていましたが、今季はキャッチャーに専念します。
坂倉は2021年にセ・リーグ2位の打率.315(首位は鈴木誠也で同.317)を記録するなど、高い打力はすでによく知られています。この年は捕手としての出場は62試合にとどまりましたが、今年キャッチャーに専念して果たしてどれくらい出場し、どの程度の打率を残すのか。キャッチャーとして言えば、90試合前後スタメンで出られればOKというところだと思います。
捕手として出場しながら打撃でも成績を残していくのは、プロでマスクをかぶった者からすると、すごいことだと感じます。僕自身は通算打率.240と、それほど打てなかったので......。正捕手として試合に出ながら、バットでも成績を残していける選手は「スーパーキャッチャー」だと思います。
キャッチャーとして試合に出続けるためには、まずは体力が必要です。僕は右投げ右打ちでしたが、試合の終盤になると握力が落ちてきて自分のパフォーマンスをなかなか発揮できないこともありました。
キャッチャーはどうしても守備のことに思考が行きがちで、打席への意識が薄くなることもあります。僕もそうでした。全部が全部そういうわけではないですが、守備に意識がいっているまま打席がまわってくることもありました。そうした打席でヒットを打っていくためには、高い打撃技術と集中力が必要です。それができずに"何か"が欠けてくると、僕みたいに思ったような打撃成績を残せなくなってしまいます。
坂倉をキャッチャーとして見た際、持ち味は体が強いところです。二盗を仕掛けられた際、刺すことができる肩の強さもあります。
ただし、正捕手として1シーズン出続けた経験はまだありません。マスクをかぶり続けることで、キャッチングやステップなど、いろんな課題が出てくるはずです。それを早い時期に、ひとつずつクリアしていってほしいですね。もともとバッティングが魅力なので、「守備は守備、打撃は打撃」としてともに頑張ってほしいところです。
そういう意味では、西武からFA(フリーエージェント)でオリックスに加入した森友哉はすごいと思います。彼はまさに「打てるキャッチャー」です。ただし、昨季は打率.251に終わりました。総合力を考えると、首位打者を獲得した2019年(打率.329)や、2021年(同.309)のようにバットでも期待されるところです。
森はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表を辞退して、春季キャンプからオリックスで準備を入念に行なってきました。新たなチームに移った捕手がやるべきことは、キャンプでピッチャーたちの球を受けて特徴を知っていくことです。ブルペンで受けるだけではなかなかわからないことがあるので、オープン戦でも受けていく。そうしてシーズン開幕を迎えると、ピッチャーは力の入れ具合や緊張感で球の質が変わってくる。キャッチャーが落ち着いてくるのは、対戦カードが1、2まわりした頃ですね。
去年までオリックスでは若月健矢が60試合以上でマスクをかぶってリーグ連覇をしましたが、FAで獲得したという経緯を考えると、今年は森をある程度使うと思います。そこで、森はどんな成績を残していけるか。若月もチャンスを窺っているので、ふたりの相乗効果でオリックスのバッテリーがどうレベルアップしていくかも見ものです。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。