【谷繁元信のセ・リーグ順位予想】3連覇のかかるヤクルトは「投手陣が少し不安」ポジション固定の阪神が1位、中日が「不気味」
谷繁元信インタビュー前編
セ・リーグ順位予想
日本中が熱狂した第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻が残るなか、今季のプロ野球がまもなく開幕する。ヤクルトが3連覇を狙うセ・リーグだが、「実力伯仲」の声も大きい。果たして、6チームはどんな力関係にあるのか。元中日監督で野球解説者の谷繁元信氏に順位予想を聞いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※
岡田彰布新監督がポジションを固定し、安定感が出そうな阪神この記事に関連する写真を見る
【1位予想:阪神】
戦力的に最もバランスがとれているのが、岡田彰布新監督が就任した阪神です。去年までのタイガースは野手のポジションが固定されず、打順も試合ごとに変わっていました。当然そうした戦い方もアリだと思いますが、個人的には選手たちがリズムをうまくつかめていないのではと感じていました。
一方、15年ぶりに復帰した岡田監督とは僕が現役選手だった頃に対戦しましたが、オーソドックスな戦い方をしてくるという印象があります。メンバーや打順を基本的に固定し、作戦でもたとえばバントで送るべき場面は送る、俊足のランナーが出たら足を絡めてくるというところです。
今季は大山悠輔をファースト、佐藤輝明をサードに固定し、梅野隆太郎を正捕手として起用していくと岡田監督は話していました。昨年までショートのレギュラーだった中野拓夢をセカンドにコンバートしましたが、高校時代やプロ入り1年目に守ったこともあるポジションなので違和感なくできるはずです。センターの近本光司、レフトに入る新外国人のシェルドン・ノイジーもある程度計算でき、新人の森下翔太も打撃にいいものを持っています。
投手陣は先発に青柳晃洋、西勇輝と実績のあるふたりがいて、西純矢、才木浩人という若手にも二桁を勝ちそうな雰囲気がある。昨年4月にトミー・ジョン手術(側副靱帯再建術)を受けた左腕の髙橋遥人も戦線復帰してくると思います。抑えには昨年最優秀中継ぎ投手に輝いた湯浅京己がいますし、岩崎優やカイル・ケラーもいる。投打ともに中心になる選手たちがそろっていて、安定した戦いをできる陣容だと思います。
【2位予想:ヤクルト】
2021年からリーグ連覇しているように力はあるチームですが、2位予想としたのは投手陣に少し不安があるからです。昨年までクローザーを務めたスコット・マクガフが退団し、新たにキオーニ・ケラを獲得。メジャーリーグでの実績もあるから抑えに置きたいところでしょうが、もし不安定だったら、セットアッパーの清水昇がうしろにまわるでしょう。ブルペンの厚みという意味では、ケラが抑えにはまると手強くなりますね。
先発では小川泰弘、高橋奎二、高梨裕稔などがいますが、昨年も一昨年も二桁勝っている投手はひとりもいません。そこが不安な部分ではありますが、それでもリーグ連覇をしているのがヤクルトです。やはり打線が強力ですね。1番として牽引した塩見泰隆は下半身のコンディション不良で開幕に間に合いそうにないですが、4番には村上宗隆が中心として座る。
さらに、昨年には高卒3年目の長岡秀樹が1年間ショートを守りました。捕手の内山壮真、外野手の丸山和郁と濱田太貴など、若手も出てきています。チームが優勝していく姿を目の前で一緒に見ながら、若手が意識を高くしていけたのは非常に大きいと思います。今年は誰が台頭してくるのか、楽しみなチームです。
1 / 3
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。