2人の大谷翔平が「重たいゲーム」を支配 わんぱくな野球少年の原風景と修羅場をくぐり抜けてきた経験力 (3ページ目)
打つほうでも、大谷は4回を投げきった直後にあわやホームランかという2点タイムリーツーベースを左中間へ放って、3点差とした。バッターの大谷が戸郷に余裕を与えたのだ。栗山監督が「翔平には『二刀流はチームを勝たせるためにある』と伝えてきた」と語っていたとおり、ピッチャーとバッター、2人の大谷が日本代表に大事な初勝利をもたらした。
試合後、お立ち台に上がった大谷は、ホームランを2本放った3日前の強化試合のあと、「まだまだ声援が足りないので、もっともっと大きな声援を」とファンを煽った時の言葉を振られて、こう返した。
「へへ......ホントにこれだけ夜遅くまで、最後まで残っていただいて感謝してますし、ただ、まだまだ足りないんで、明日、もっともっと大きな声援で、よろしくお願いします」
そう言った大谷は、ジャッボーンと海へ落ちた日を彷彿させる、そんな"わんぱくな"顔をしていた。
著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。
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