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2人の大谷翔平が「重たいゲーム」を支配 わんぱくな野球少年の原風景と修羅場をくぐり抜けてきた経験力 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 その理由は、試合後の栗山監督が話した「状態はよくなかった。よくないなかでもああやってまとめていけるのは、修羅場をくぐりながら前へ進んできたから」という言葉が物語っている。大谷は、よくないなかでどうピッチングをまとめたのか。

 立ち上がりから、ストレートが暴れていた。引っかけたり抜けたりして、制御が効かない。そんな思うに任せない状況を、スライダーが救う。右バッターが思わず腰を引いてしまう横のスライダーが大きく曲がって、アウトコースへ決まった。左バッターには縦に落ちるスライダーを投げる。

 そうやってアウトを積み重ねながら、キャッチャーの甲斐拓也のサインに何度も首を振って、ストレートとスライダーを投げ分けた。やがてストレートの精度も上がっていく。状態がよくないなかでも、その日にいい球種を探し出して、大谷は試合をつくってきた。そういう修羅場を、メジャーのマウンドで何度もくぐり抜けてきたのだ。

【日本に勝利をもたらした2人の大谷翔平】

 大谷自身が試合後のお立ち台で「序盤から重たいゲームだった」という、あと一本が出ない試合展開のなか、それでも安心感をもたらす大谷の力強いピッチングが続いた。ヒット1本を打たれただけの、中国打線を圧倒する49球。4回をゼロに抑えて2番手の戸郷翔征にバトンを渡した大谷のピッチングを、栗山監督はこう評した。

「アメリカから来て、登板間隔も空いている。非情に難しい状況であることは間違いない。とくに、こういうプレッシャーがかかるなかで、二刀流でいく。そういう試合だったので、いろんなことがありますけど、いろんな部分でさらにさらに前に進んでいる感じは受けました。個人的にはよかったなというか、ホッとしたというか、うれしかったというのはあります。試合に勝つために、野球を楽しみながら必死になっている姿、そういったものが彼の本質だと思うし、それが試合を見に来てくれたファンであったり、映像を見てくれているファンのみなさんに届いたと思うので、それが一番大きなことで、そういう意味ではよかったなと思います」

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