高木豊が「バットコントロールがうまい現役選手」を分析。セ・パともにベスト3を選んだ (4ページ目)
――昨年リーグ2位の148安打をマークした髙部瑛斗(ロッテ)選手について、高木さんは以前に「バットコントロールがいい」と言われていましたね。
高木 彼はバットを内側から出せるところがいいですね。内側から出すとボールを長く見ることができますし、振り遅れてもカットしやすくなる。ただ、バットのヘッドが遅れて出てくるのでなかなか引っ張れないことがあります。髙部も当初はなかなかボールを引っ張ることができませんでしたが、打席数が増えるにつれて強く引っ張れるようになりました。
あと、肘の使い方がうまくて手首の柔らかさもある。これからもっと伸びていく選手ですし、将来的には3番を打てるバッターだと思いますよ。
――他にバットコントロールがうまいと思うバッターは?
高木 銀次(楽天)です。まずミート力が高く、(左打者にとって投手側の)右腕の肘を開けたり締めたりする時の強弱のつけ方が抜群にうまい。右肘を開けた時は逆方向に打ち、締めた時に引っ張るという技術が身についています。
――同じ楽天で、昨年に最多安打のタイトルを獲得した島内宏明選手はいかがでしょうか。
高木 彼は自分の形に呼び込んで打つタイプですね。膝で拾っていくという感じの打ち方で、広範囲のストライクゾーンを打てます。スイングスピードも速いですし、速い球でも遅い球でもオールマイティーに対応していけるバッターだと思います。
――ソフトバンクの中村晃選手のバットコントロールはいかがですか?
高木 うまいと思いますが、彼はいろいろなポジション、打順を任されてリズムが合わないことが多い印象です。毎試合同じ打順なら落ち着いて打席に入れると思いますが、打順によって役割は変わりますし......。走者が一塁にいると必ずライト方向に引っ張りにかかりますし、引っ張った打席の後は流してみたりと状況を判断する力があります。ある程度なんでも器用にこなせますが、"器用貧乏"な感じになっていますね。
柳田悠岐(ソフトバンク)も、バットコントロールはうまいですよ。体勢を崩されてもバットコントロールで対応し、片手でホームランを打つこともできる。逆に言えば、器用でバットコントロールがいいから、パワーがある割にはホームラン数が伸びないんだと思います。
器用さが邪魔をしてホームランにならないケースがけっこう見られます。あのパワーありきで、村上宗隆(ヤクルト)みたいに"形で打つ"ことに徹したら、ホームラン王を獲れるでしょうね。
――では、パ・リーグで3人を厳選すると誰になりますか?
高木 甲乙つけがたいですが......。3人選ぶのであれば、体勢を崩されても柔軟に対応できるタイプという意味で、松本、近藤、銀次ですね。セ・リーグで選んだ3人も含め、彼らが体勢を崩された時に手首や肘、膝をどう使って打っているかに注目してみるのも面白いと思います。
(歴代選手編:「バットコントロールがうまい歴代の選手」を厳選。ブレイク前のイチローのすごさに思わず「なんで試合に出てないの?」と質問した>>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に解説したYouTubeチャンネルも人気を博している。
■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア
著者プロフィール
浜田哲男 (はまだ・てつお)
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。
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