群馬しか知らなかった人見知り少年が侍ジャパン相手にも堂々。井上温大が目指す巨人の左腕エースへの道 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 入団して1年あまりで左ヒジを手術し、同年オフには背番号が「91」から「091」に変更。背番号3ケタの育成選手契約に切り替わった。1年に及ぶリハビリの末に、井上は復帰を果たす。

【立ち姿でいい球かわかる】

 すると、井上は今までにない感覚を覚えたという。

井上 リハビリの期間にトレーニングや食事を見つめ直したんです。それでまた投げられるようになった時に、もう1球目からスピードが上がっていて。

── 高校時代のストレートの最速は144キロと驚くような数字ではありませんでした。プロでは明らかに球速が上がっていますね。

井上 まず平均の球速が上がりました。あとは回転数や回転効率のデータも1年目と比べて断然よくなっています。今までは1球1球、数値がバラけていたんですけど、今は安定して数値が出るようになってきています。

── どんな数値が出ているんでしょうか。

井上 回転数は2300〜2400くらい、回転効率は100パーセントに近いです。回転数はプロではそこまで高い数字ではないんですけど、今までの自分と比べたら上がってきた実感があります。

── いい時のストレートは、投げていてどんな感覚なのでしょうか?

井上 2ストライクに追い込むまでの過程でファウルをとれる時に、いいボールが出やすいです。1打席を通して、「あそこに投げたら打たれない」というコースと軌道がなんとなく見えてくるんです。2ストライクになると気持ちも高ぶってきて、そこへ思いきり投げると打たれないですね。

── ふだんのストレートとはまるで違う?

井上 足を上げた瞬間にわかります。立ち姿が長いとタメの時間も長くなりますし、そこからグラブでしっかり壁をつくって、バッターに近いところでリリースできる感覚があります。

── 立ち姿もすごくきれいになりましたよね。見ていて、ピタッとはまっている感じがします。

井上 トレーナーやコーチから「おまえは立った時の姿でいいボールかどうかわかる」と言われました。最初は自分ではよくわからなかったんですけど、動画を見返してみたらたしかにそうだなと。

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