群馬しか知らなかった人見知り少年が侍ジャパン相手にも堂々。井上温大が目指す巨人の左腕エースへの道

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」
第5回:井上温大(プロ野球)

 2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなパフォーマンスで魅了してくれるのか。スポルティーバが注目する選手として紹介する。

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「自分は群馬しか知らないし、自分からガツガツと前に出られるタイプではないので不安はあります......」

 今から4年前、いかにも心細そうにプロ入りへの不安を吐露した高校球児が、今や読売ジャイアンツのトッププロスペクトになっている。

 井上温大──前橋商から2019年ドラフト4位で巨人に入団したサウスポーだ。

2022年プロ初勝利を挙げ、さらなる飛躍が期待される巨人・井上温大2022年プロ初勝利を挙げ、さらなる飛躍が期待される巨人・井上温大この記事に関連する写真を見る

【入団して1年で育成選手に】

 高校時代は全国的に無名の存在だった。全国大会はおろか、関東大会への出場経験もない。ドラフト候補と騒がれるようになったのは、背番号10をつけながらも県大会で好投した3年春から。それまでは強豪私学が相手だと萎縮して、自滅してしまうような投手だった。

 巨人に入団して3年目の2022年、井上はプロ初勝利をマークする。さらにシーズン後の11月6日には、侍ジャパン強化試合で巨人の先発投手に抜擢。3イニングを投げ、4奪三振無失点の快投を見せた。

 2023年シーズンに向けて期待が高まる井上に、3年ぶりのインタビューが実現した。パソコン画面上で久しぶりに顔を合わせた井上は「お久しぶりです」とはにかみながら、プロ入り後のことを語り始めた。

── 高校時代は「群馬しか知らない」とコンプレックスを語っていましたが、プロの世界に順応するのに時間はかかりましたか?

井上 1年目はプロの雰囲気を初めて感じて、それに慣れるのにまるまる1年かかりました。同期の堀田(賢慎)や年の近い直江(大輔)さんや横川(凱)さんがいろいろと教えてくださって、慣れることができました。

── プロ2年目はイースタン・リーグで開幕投手を務めましたが、すぐに左ヒジの故障で離脱。左肘頭スクリュー挿入術の手術を受けています。

井上 疲労骨折みたいな症状でした。自分の投げ方や痛めた箇所から再発の恐れがあったので、ボルトを入れて再発しにくくする手術を受けました。

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