現役ドラフトの問題点を高木豊が指摘。選手たちの心情、「必ずひとりは獲らなきゃいけない」ルールに疑問 (4ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

――実力がありながらもポジションがかぶっている選手がいる場合は、出す側にも獲る側にもメリットがありそうですが。

高木 そうですね。例えばヤクルトだったら、キャッチャーに中村悠平と内山壮真がいて、3番手に古賀優大がいる。ヤクルトではあまり出場できないけれど、他のチームに行ったら出場試合数が増えるかもしれない、という選手であれば「他のチームに行って頑張れ」と送り出してあげる。そういうケースはいいと思います。

 ただ、本当にそういう選手を出せるのかどうかですよね。「何かあった時のために古賀にはチームにいてもらいたい」と出し惜しみをすると、戦力として厳しい選手を提案せざるを得ません。そのほかに考えられるケースとしては、それまでは育成契約をしていたのに、急に支配下にしてその選手を出すといった可能性もあります。(今季の日本シリーズ終了後に育成枠から支配下登録された選手は除外される)

――確かにどういう選手がリストアップされるかわかりませんし、各球団がそこをどう考えるか。いずれにせよ、同制度で移籍したひとりでも多くの選手が一軍で活躍できればいいですね。

高木 移籍した選手の半数が一軍で活躍できれば成功だと思いますが、1、2人でも成功と言えるのか......。僕は難しいと思いますけどね。

 新しい取り組みに対しては必ず賛否が出ますし、周囲は最初、批判から入ることが多いんですよね。だから改革する側の方々は大変だと思いますが、熟考してここまでもってきて、いよいよ1回目が行なわれるわけですから。ただ、この制度が数回だけで終わってしまった場合、その数回にリストで出された選手は不幸を見ることになりかねませんし、慎重に進めていってほしいなと思います。

(後編:「現役ドラフト」でチャンスが広がりそうな選手たち>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に解説したYouTubeチャンネルも人気を博している。

【著者プロフィール】
浜田哲男(はまだ・てつお)

千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア

高木豊のYouTubeチャンネルはこちら>>

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