ロッテにドラ3で入団もプロ1年目にイップス。島孝明は育成契約打診を断り、大学進学からの「野球界復帰」を目指す (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文・写真 text & photo by Matsunaga Takarin

「自分のなかでは育成に切り替わるタイミングがひとつの区切りの機会じゃないかと思いました。育成契約の話のあとにフェニックスリーグに行き、吉井(理人/当時ロッテ一軍投手コーチ、現監督)さんが帯同してくれたんです。いろいろと話をして、練習につき合ってくれて、親身になってくれました。

 フェニックスリーグの終盤、これからのことをどうしようかと相談した時、吉井さんは無理に引きとめることなく、やりたいことをやりなさいって感じで言ってくれたんです。それまでやってきたことに自信を持てなかったし、ここで育成になっても1年でクビになるかもしれない。その先に未来を感じてなければ、自分のしたいことをしたほうがいいかなと......スパッと割りきって考える自分がいました」

育成契約を断りロッテを退団

 島は思いの丈を吉井に吐露した。当時、一軍投手コーチだった吉井は複雑な思いを語った。

「2019年にロッテの一軍ピッチングコーチに就任したばかりで、変な先入観がなかったので、いいと思った選手は一軍のキャンプに連れて行こうと決め、プロ3年目の島もそのうちのひとりです。イップスは技術的な部分が要因とも言われていますが、根本的な原因がわからないため治しようがなく......島はいいものを持っていたので『きっかけさえつかめば』と思って見ていました。

 フェニックスリーグの時に相談を受けました。本人がどういうふうに考えているのかが大事であり、いつまでも選手へのこだわりを持っていると、次のステップへのチャンスを逃してしまいます。島といろいろ話をしてみて、勉強したいという強い意志を見せる以上、ここがチャンスなんだと思って快く送り出しました。島はしっかり自分の考えを持って行動できる人間です」

 島がイップスになってしまったのは自分自身の責任だと感じていることを伝えると、吉井は真っ向から否定した。吉井は、メンタルコントロールをできなかった指導者に責任があると断言した。

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