片岡保幸が振り返る伝説の走塁。2008年日本シリーズ西武VS巨人の第7戦「サインはギャンブルスタート。すべてがイメージどおり」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

根拠のない自信で盗塁に成功

── その結果、2球目はさらに抜けたボールで、狙いどおりのデッドボールとなりました。続く2番打者は栗山巧選手でした。

片岡 案の定、抜けたボールがデッドボールになって、完全に思い描いていたとおりの展開でした。ここまですべてイメージどおりに進んでいましたね。それで一塁に向かう時には「何球目で走ろうかな?」と考えていました。

── すでに、盗塁のサインが出ていたのですか?

片岡 いえ、サインは出ていませんでした。ベースに着いた時に、一塁ベースコーチの岡村(隆則)さんに、「バントもあるからな」と言われて、初めて「そっか、バントもあるのか」と気づきました。でも、三塁コーチの清家(政和)さんからはバントのサインが出ない。そこで、「じゃあ、走れっていうことだな」って勝手に解釈しちゃったんです(笑)。

── あらためて確認したいのですが、片岡さんの場合は「いつでも走ってもいい」という「グリーンライト」だったんですか?

片岡 走ってはいけない場面では「待て」のサインは出ましたけど、基本的にグリーンライトでした。この場面でも、ベースに向かっている時は「何球目に走ろうかな?」と考えていたけど、ベース上で「初球に走ろう」と決めていました。

── その根拠を教えてください。

片岡 越智くんは回跨ぎで疲れているから、牽制球を投げる余裕もないだろう。おそらくバントを警戒しているだろう。そんなことを考えたら、「初球に盗塁できるかもしれないぞ」と思ったんです。

── そして、栗山選手の初球に見事に盗塁を決めました。

片岡 スタートは、それほど悪くはなかったです。ただ、3、4歩目くらいで膝がガクッときて中間走は失敗しました。ただ、そこからは順調で力まずに走れました。上体が起きることなく、そのままの状態でスライディングもできたし、結果的にいい走塁になったと思います。スライディングでもぎとった盗塁でした。

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