片岡保幸が振り返る伝説の走塁。2008年日本シリーズ西武VS巨人の第7戦「サインはギャンブルスタート。すべてがイメージどおり」 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

日本シリーズ史に残る名場面

── 続く栗山選手が2球目にバントを決めて、一死三塁。同点のチャンスとなり、打席には3番の中島裕之(=宏之/現・巨人)選手が入ります。外野フライでも同点という場面で、ジャイアンツ内野陣は前進守備を敷いていました。この時、西武ベンチからはどんなサインが出ていたのですか?

片岡 ギャンブルスタートのサインでした。

── 西武ベンチの選択は、内野ゴロだったら走る「ゴロゴー」ではなく、打った瞬間に走る「ギャンブルスタート」のサインだったのですね。

片岡 そうです。ゴロゴーではなくてギャンブルスタートでした。この試合の初回にも同じケースがあって、僕がサードランナーでナカジ(中島)がショートゴロを打って、僕が挟まれてアウトになりました。渡辺(久信)監督のなかにはそのイメージがあって、ギャンブルスタートだったのかもしれません。でも、これも不思議なんですけど、三塁ベースにいて「絶対、ナカジは初球を振ってくるな」って思っていました。なんの根拠もないんですけど(笑)。

── 結果的に、中島選手の放った打球はボテボテのサードゴロとなりました。片岡さんは猛然とダッシュして悠々セーフで同点となりました。

片岡 イメージどおりの打球でしたね。ワンバウンド目で、すでに「よし、もらった!」と思いました。あの時はすべてがイメージどおりに進んでいました。イニングの先頭打者として塁に出て、盗塁を決めて、バントで進んだあとに内野ゴロでホームインする。自分の役割をまっとうできたと思います。この年、ずっとやってきたことの集大成がこの回に詰まっていましたね。

── のちに片岡さんはジャイアンツで指導者となります。指導者目線で考えて、「片岡コーチ」から見た、この時の「片岡選手」についてはどのように評価しますか?

片岡 いろいろ、正しくないと思います(笑)。

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