斎藤佑樹がピッチングに「適当」を入れて覚醒。甲子園初完封でいよいよ運命の駒大苫小牧戦へ (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

試行錯誤のフォーム改造

 じゃあ、どうするのか。

 まず、春のセンバツで(関西高校との引き分け再試合で)連投して勝ったことが自信になっていた、ということはあったと思います。あの2試合で僕はレベルアップできた。関西と引き分けた試合で投げた球数は15回で231球、翌日の再試合では先発せずに3回から投げましたが102球を投げて、2日続けての2試合で投げたのは、333球でした。

 しかも、最初から最後まで全力で投げたんです。ただその結果、センバツの準々決勝は3連投となって横浜にメッタ打ちを喰らった。ああ、ピッチャーとしてレベルアップできてもスタミナがなければダメなんだと思うと同時に、もしかしたら全力で投げるばっかりがいいわけじゃない、ということも感じていました。それを夏の準決勝のときに思い出したんです。

 もうひとつ、夏に連投できたのはフォームを変えていたことも幸いしたと思います。センバツのあと、早稲田の先輩で、トヨタ自動車で投げていた佐竹(功年/早大出身で斎藤よりも5つ上)さんのフォームを参考にノーワインドアップで、右ヒザをグッと沈めてから体重移動して投げるフォームに変えたんです。

 ただ、右ヒザを曲げる時の深さとか、重心の位置とか、じつは試行錯誤はずっと続いていました。身体の状態も含めて、いい感じの時には"ハマる"感覚があったんですけど、そうじゃない時には、どこにどうハメたらいいのかがわからなかった。だからフォームを変えた直後は、右ヒザを曲げて溜めた重心を受け止める側の左足がものすごく張ったりして、なかなか新しいフォームが身体に染み込まなかったんです。

 そこを乗り越えて、下半身が体重移動を受け止められるようになってからは、上半身が本当に疲れなくなりました。それは下半身を使って投げられていたから、上半身はリラックスして投げられた......その分、肩ヒジに負担をかけずに済んで、スタミナも増した感覚です。

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