ヤクルト劇的勝利で連覇達成。レジェンドOBが語る「2022年のスワローズ」「高津采配の妙」「村上宗隆の存在感」 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

厚みを増した控え選手層

◎飯田哲也氏

 今シーズンに関しては、村上宗隆の打撃に尽きる。今年はやってくれるだろうと思っていたが、50本塁打以上打つとは予想以上だった。「村上の前に走者を出して一発」が最大の得点源だった。

 1番の塩見泰隆がリーグ2位の24盗塁を記録し、リードオフマンとして見事に機能した。一方で、過去3度の"トリプルスリー"を達成している山田哲人は、リーグ最多の139三振を喫し、打率も2割4分台と苦しんだ。それでも23本塁打、65打点と要所でいい働きをしたのはさすがだった。また二塁の守備も安定していた。

 ほかにもベテラン・青木宣親に代わり、山崎晃大朗が攻守にわたり渋い働きを見て、ホセ・オスナも派手さはなかったがシーズンを通して安定した打撃を披露した。

 チーム本塁打はリーグトップで、チーム打率と盗塁数はリーグ2位。全体的に次の塁を狙う姿勢が、リーグトップの得点に結びついたのだろう。

 ディフェンス面では、中村悠平の存在感が大きかった。ケガにより開幕は出遅れたが、5月3日に戦列に復帰。前日までの27試合で15勝12敗だったが、それ以降、マジック53が点灯した7月2日までの48試合で36勝12敗。5月14日の広島戦から7月3日のDeNA戦まで14カード連続勝ち越し、交流戦も優勝。中村だけの力ではないが、それでも投手陣は安心したのではないか。中村が復帰して、チームに落ち着いた感じがした。

 もうひとり、忘れてならないのが高卒3年目の長岡秀樹だ。長年、ヤクルトの課題だったショートのレギュラーの座をつかんだ。規定打席に到達し、本塁打は8本。バッティングに関してはまだまだ非力なイメージはあるが、それでもショートのポジションを1年間守り続けたのは見事だ。

 ポジション奪取には「自分でチャンスをつかむ選手」と「チームとしてつくり上げる選手」の2つある。長岡は後者に近いが、高津臣吾監督が我慢して使って、長岡もその期待に応えた。来年以降は期待しかない。

 タイトルを争う選手は村上しかいないが、それでも優勝できたのは「チーム力の勝利」にほかならない。今シーズンに関してはレギュラーと控えの差がほとんどなく、選手それぞれが与えられた役割を確実にこなし、結果を出した。ベテラン、中堅、若手の力がうまく噛み合ったからこその連覇だった。

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