ヤクルト劇的勝利で連覇達成。レジェンドOBが語る「2022年のスワローズ」「高津采配の妙」「村上宗隆の存在感」 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

連覇を実現した3つの要因

◎広澤克実氏

 優勝した理由は1つではなく、複合的な3つの要因があったと思っている。

 まず1つ目は村上宗隆の影響だ。かつてオリックスが、イチローという選手が出現したことによって1995年に優勝し、翌年連覇を果たしたが、その時の状況に似ている。突出した選手がひとりいることで、周りのレベルも上がることがある。まさに今年は、村上の存在感の大きさを強く感じたシーズンだった。

 2つ目は高津臣吾監督の采配。現役時代、高津監督はNPBのあと独立リーグで選手兼監督を務めるなど苦労した。その後、ヤクルトの二軍監督を務め、一軍監督の1年目(2020年)は最下位を味わった。これらを経験したことで、どんなことが起きても動じない強さがある。今季はコロナにより大量離脱者が出るなどチームは非常事態に陥ったが、今できることを最優先して勝利につなげた。采配により磨きがかかった印象を受けた。

 3つ目はリリーフ陣。とくに「勝利の方程式」を確立できたことが大きかった。今季は梅野雄吾(16ホールド)、清水昇(24ホールド)、マクガフ(37セーブ)の3人が終盤の大事な局面を担った。2015年に優勝した時も秋吉亮(現・ソフトバンク)、ローガン・オンドルセク、トニー・バーネットの3人が盤石だった。終盤に計算できる投手がいると、試合運びがスムーズにいく。今シーズンは先発完投型の投手が少ないなか、この3人を筆頭にリリーフ陣の頑張りが大きかった。

 高津監督自身、90年代のヤクルト黄金期の名クローザーである。そのあたり、終盤の投手の使い方を熟知し、投手の調子の見極めはさすがだ。

 ヤクルトの本拠地・神宮球場は決して広いとは言えず、ホームランも出やすい。それゆえ、攻撃的なチームづくりになりがちなのだが、高津監督は打撃陣に頼ることなく、投手陣の整備を最優先に考えた。そういった意味で、自分たちのやるべき野球に徹した高津采配の勝利だと言えよう。

 この先、クライマックス・シリーズ(CS)、そして日本シリーズが待っている。セ・リーグの覇者の2年連続日本一は、1979、80年の広島以来、じつに42年ぶりとなる。次はそこを目指してほしい。

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