佐々木朗希、奥川恭伸、宮城大弥、紅林弘太郎...もはや伝説となった2019年の高校日本代表候補合宿のメンバーがすごすぎる! (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

駿河総合高校時代の紅林弘太郎駿河総合高校時代の紅林弘太郎この記事に関連する写真を見る

スカウトの評価を上げた紅林と黒川

 それでも、この代表候補合宿でスカウトの株を上げた選手も多かった。

 たとえば紅林弘太郎だ。静岡県内では好素材と知られていたものの、全国大会の実績は皆無。だが、全国区の有望選手に混じっても、その潜在能力は際立っていた。

 身長186センチと大型ながら機敏なフィールディングに、三遊間の深い位置から伸びる強肩を披露。打撃ではやや当てにいくシーンもあったものの、ヘッドをしならせたスイングには底知れないスケールを感じさせた。紅白戦では奥川からレフトへ二塁打を放っている。

 そんな紅林も、佐々木の前には手も足も出なかった。佐々木が登板した1イニング目の3人目の打者として対戦し、スライダーを空振り三振。2イニング目は無死一塁から始まる変則ルールのため、紅林が一塁走者に。佐々木の140キロ台のスライダー、フォークを捕手の藤田健斗(中京学院大中京/現・阪神)が止められなかったため、労せず三塁まで進んでいる。

 紅白戦後、紅林に打者・走者の立場から佐々木のボールがどう見えたか聞くと、こんな感想が返ってきた。

「ボールが生き物みたいに動いていました。こんなの初めて見ました」

 紅林はその後、ドラフト2位でオリックス入り。その3年後、今度はプロの舞台で完全試合の餌食になるとは、紅林も想像しなかったに違いない。

 黒川史陽の打撃力も際立っていた。この代表候補合宿では、国際大会を見据えて木製バットを使用した。順応に苦しむ打者が多いなか、黒川はフリーバッティングから快打を連発。紅白戦では西純矢から右中間フェンスを直撃する二塁打を放った。二塁手としての守備力は平凡ながら、打撃力は十分にプロの素材だと強く印象づけた。

 黒川は5季連続で甲子園に出場した有名選手だったが、甲子園通算打率は3割未満。大きなアピールができていたわけではなかった。それでも、代表候補合宿で見せた木製バットへの順応性は黒川の資質の高さを物語っていた。楽天の後関昌彦スカウト部長は、かつて黒川についてこう語ったことがある。

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